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「かっこいいモデルさんと腕組んでー、そのうち恋にも発展したりなんかしちゃってー」
ぽんぽこぽんぽこ。むしゃむしゃパリパリ。
痩せたいとは年中思っているが、それは無理だとも年中思っているので、若葉は食べる手を止めない。ふと目を腹から逸らせば、大木のような足二本が醜く横たわっていた。
鏡はもうずいぶんと前からすぐそこで伏せられたまま、触っていない。だからスマホのカメラモードをオンにする。インカメラを起動して、そこに映った人物を観察する。
「うっわ、今日もひどいなあっ」
手入れのされていないぶつぶつの肌に団子鼻。黒縁メガネの奥に潜む小さな双眸。どこへ向かって流れたいのかわからぬ短い前髪は、天然パーマのせいで寝癖のように見えた。
「どこからが首ですかーっ」
山頂でのやっほーの如く、我に投げかける。
「もしかしてあなたは人間じゃなくたぬきとかトドなんですかー?はっきりしてくださーいっ」
その言葉にむっときた鏡の中の人物が、あっかんべーをしてきたから笑ってやった。ひとりで何をやっているのだろうと虚しくなったところで、若葉はいくらか乱暴にスマホを放った。
頭をソファーの座面につけ、見上げる天井。
「あーあっ。綺麗になりたいぜこんちくしょうっ」
愚痴を溢したその瞬間に、彼女のまわりが一変した。
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