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#002 神社にいたのに
翌日。若葉が目覚めたのは、正午を過ぎてからだった。高校を卒業して以来、彼女がアラームをセットすることは滅多にない。週五日勤めているコンビニへ向かうのは、大概が夕方の時間帯。よって寝坊し遅刻する心配も少ないのだ。
「もう、若葉ったら!こんな時間までぐーすか寝ちゃって!たまには早起きして、ジョギングでもしてきなさいよ!」
ぼさぼさ頭のまま、リビングがある一階まで階段を下りると、おはようよりも先に母がくれたのは怪訝な顔。
「外はこんなにも良いお天気だっていうのに!あなたはコンビニと家の往復しかしないんだから!」
それもたったの数分で行ける距離!と付け加えた母は窓の外、彼女が庭で育てているネモフィラに目を向けた。花のまわりを優雅に舞う蝶、朝陽が光の宝石をきらきら落とす。
朝からピーピーうるさいなあ、と母の声に嫌気がさしつつも、腹が減った若葉は聞いた。
「今日の朝ごはん、なに?」
その発言に、母は激怒した。
「若葉の脳みそには食べることしか入ってないの!?それにもう昼です!体型も性格もだらしないあなたにはなにも作ってあげません!」
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