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若葉の趣味は、食べることと妄想することと、そして小説を書くことだ。できるならば将来小説家にだってなりたいと、彼女は思っている。
「わたしに片思いしてるAくんがいきなりキスを迫ってきて、避けきれなくてチュッてしちゃって、でもそれが彼氏にバレて怒られちゃって」
コンビニへ出勤するにはまだ早い時間。幸せな絵空事を脳で膨らませながら、若葉は近所の神社へ来た。ここは年始におみくじで、大大吉を引いた場所。自室のハンガーフックにそれを飾ってからは、この神社が彼女のお気に入りスポットになっている。
「それで俺のこと本当はどう思ってんだよとかって彼氏に言われちゃって、答えなかったら抱きしめられちゃって、それはそれはもう、強引でっ」
若葉が作る話は、基本彼女が主人公。ナイスバディーでイケイケな妄想の中の彼女はモテモテで、男と男の狭間で困っていることも多い。
「ああ、もうっ。無理矢理脱がさないでよダーリンっ」
ないに等しいくびれをくねくねさせながら、鳥居を潜り、狛犬の間を抜けて鈴まで辿り着けば、何故だか昨日見た夢を思い出した若葉。
莉乃、大好きだよ。
そう言った裸の男性は、いわゆるイケメンの類に入る人間だった。芸能人でもない、スポーツ選手でもないあんな美形を、よくもまああそこまでリアルに想像できたものだと自画自賛した。
「裸ってことは、やっぱそうだよね。あのまま居眠りしてたらわたし……」
わたし、夢の中でエッチしてたんだよね。
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