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ぐずぐずに溶けた奈月の中に、慎重に自身を押し進めていく。まだ亀頭を沈めただけなのに、熱くうねる蜜壁が奥へと導くように締め付けてくるから我を失いそうになる。
童貞じゃあるまいし、先っぽを挿れただけでイってしまうだなんて格好悪すぎる。
静かに大きく深呼吸をして、僅かばかり冷静さを取り戻した。
浅いところを刺激するように、先端だけをつぽつぽと抜き挿しする。
ぷちゅ、にゅちゅ、と控えめなのに酷くいやらしい音が、部屋を濃密で甘やかな色に変えていく。
確かに、熱い。
ほんのりと酔っている奈月の中はただでさえいつもよりも熱いのに、潤滑剤の効果なのか、絡みつく粘液が直接ペニスの温度を上げていく。
「は…んッ、あぁっ…もっと、奥まで…、たっく…ん」
小さな手が、そろそろと探るように結合部分に近づいてくる。
白くて細い中指と薬指の間に、僕の屹立の根元を挟み込み、すりすりと優しく扱くような動きをする奈月に翻弄されそうになる。
「ッ…!奈月の中、気持ちよすぎて…今奥まで挿れたらすぐにイきそうだから…」
するりと肩に手を乗せて、潤んだ瞳のずるい上目遣いで僕を射抜いた奈月が、秘め事のように囁いてふわりとほほ笑む。
「いつでも…イッていいよ…」
「…ッ!」
なんだか僕よりも余裕のありそうな表情に、大人気なくも悔しい気持ちが込み上げてきた。
潤滑剤を使った時に、全ての箱を開封しておいてよかった。
まだ使用していない最後の一つを手に取り、さも落ち着きがあるような声色で告げる。
「奈月も、何回でもイっていいよ」
「え……?や、待って…いま、それされたら…」
ピンクローターのスイッチを入れて、繋がったまま奈月の陰核に優しく当てる。
ローターを当てた瞬間に、蜜壁がギュッと締まった。
「やぁぁあそれだめぇッ!」
奈月が腰を引いたことで、ペニスがぬぽっと抜けてしまった。
逃げた腰を引き寄せて、血管が浮き出るほどに剛直した屹立を最奥まで突きいれた。
「はぁアあッん!!」
ぎゅっと締まってひくっと緩む。
そしてまたきゅうっと締まる。
ビクビクと収縮する内側とカクカクと痙攣する外側が、奈月が達したことを教えてくれる。
搾り取られそうになるけれど、もっと長く繋がっていたいから必死に堪えた。
「…ッ、奈月のイキ顔、可愛い。もっと見たい。もっと気持ちよくなってほしい」
はぁはぁと呼吸を整える奈月の下唇を甘噛みして、頬をべろりと舐め、耳を舐りながら、ペニスの先端を膣奥にぐりぐりと擦り付ける。
「ねぇ、今日何回イったか覚えてる?」
「そんなッ…わかん、ない…」
「何回イけるか、試してみようか」
「やらぁ…も、むり……おかしく…なっちゃうよぉ…」
はらりと涙をこぼしながら、いやいやとかぶりを振る奈月に、醜い嗜虐心が込み上げる。
泣かせたい。
この世界で一番綺麗な涙を、僕だけのものにしたい。
奈月の表情を歪めることができるのは僕だけでありたい。
もっともっと啼かせたい。
「だから言ったのに。僕から…離れてって…」
けれど、既に手遅れだ。
今は逃してあげられない。
「二人でおかしくなろう…?一緒にイこう」
腰をゆさゆさと揺らすと、深く結合している場所から、ぷちゅ、くちゅ、と粘着質な音がする。頭の中までどろどろに溶けて、奈月と気持ちよくなることだけしか考えられなくなる。
もっと……もっとだ。
もっと僕を欲しがって。
無意識に吸い付く蜜壁で、身体全部で感じて搾り取ってほしい。僕の全てを。
再びローターのスイッチを入れて、ツンと尖った乳房の頂に押し当てる。
「んやぁあッ!」
苦し気に眉根を寄せる奈月のおでこに唇を寄せて、額に浮かんだ汗を舌で拭った。
「気持ちよくない?」
「は…ぁん、イイっ…いい…けど…やだぁ」
矛盾している。いいのか、駄目なのか。
けれど、僕も奈月に対してはいつも矛盾を抱えているのだから、これでおあいこだ。
「じゃあ…もっとイイところに当ててあげるね?」
「ふぇ……?」
身体を起こして、奈月の膝裏を持って僕の太腿に乗せた。斜め上に軽く腰を振って突き上げつつ、左手の人差し指と親指を陰核の隣に食い込ませて、可憐な小粒を剝き出しにする。
「奈月さ、好きだよね。クリトリスの裏側弄られるの。いっぱい可愛がってあげるね」
「うそ…や、待って、そんなのされたら…」
ぷりっと姿を現したつやつやと艶めくピンクの蕾の付け根の裏側に、ブルブルと小刻みな振動を繰り返すローターを当てながら、緩慢な抽挿をして内壁を擦る。
「あぁんッらめぇっ!ぃやッあぁンッッ!イクッ!ぃく…イっちゃ、んあぁッ!!」
ビクン、ビクンと大きく弓なりに腰を浮かせて、後ろ手で必死にシーツを掴む奈月。
さっきまでの比ではないほどに熱いうねりが射精を促してくる。
「駄目だ、そんなに締め付けられたら…僕も……ッ!」
「ふぁアッ…たっ、く…ッ…いっしょに…んァアッ!!」
ぎゅうぅ、と搾り取られるような快楽に抗えず、最奥に全てをぶち撒けた。
悦びに打ちひしがれるように、ペニスがビクンビクンと奈月の中で跳ねている。
ローターのスイッチを切って放り、顎に滴り落ちる汗を腕で適当に拭う。
奈月に覆いかぶさり、乱れた呼吸も整わないままに甘い口腔を貪った。
強く抱きしめながら唇を重ねる。
荒い呼吸のままする、息苦しくて窒息しそうなキスが気持ちよくて堪らない。
ただそれは僕の独りよがりな暴走で、華奢な手で肩をキュッと掴んでくる奈月は、苦しいだけかもしれない。
そして、こんなにも身体をドロドロに溶かしあっても、心の中の不安まで溶けてはくれない。
唇を触れ合わせたまま、奈月の表情を窺い見る。半分ほど落ちたまぶたで、今にも眠ってしまいそうに疲労を滲ませているのが分かる。けれど…、
「……ごめん」
「っん…?なにが…?」
「まだ、足りない」
「へ…っ?」
唇からあごに下りて、首筋を通り、鎖骨を甘噛みしながら、弾力のある乳房に顔をうずめる。
やわやわと指を沈ませて、桃色の尖りを弾く。全然食べ足りない。
舌先を伸ばすと、弱い力で肩を押し返された。
「だめ…、いま汗かいたから…シャワー行きた…」
「却下」
有無を言わさず、ぢゅっと乳首を吸いたてる。
「ん、くっ……ちょっと、休ませて…?」
つぽんと唇から解放して、指先で捏ねる。
「休んでていいよ。奈月は寝てていい」
「あッ…んぅ…寝られ、ないよ…」
押せば沈んで摘まめば硬くなって、むにむにと僕の手の動きに合わせて形を変える奈月の乳房。しっとりと手のひらに吸い付いてすべすべとした肌はどこまでも綺麗だ。
「ぁッ!んもぅ、…拓也くん、おっぱい好きなの?」
「奈月のだけだよ。…まだわかってくれてないみたいだね。お仕置きが必要?」
右の乳首を爪の先でカリっと引っ搔き、反対側は軽く歯を立てる。
「んぁッ!ちが…っ、わかってるからッ…」
わかっていない。
僕という人間の醜悪さも、危険性も。
今日はいつにも増して優しくできない。
好きになればなるほど独占したくなる。
日々想う気持ちは膨れていくばかりなのに、これ以上愛したらどうなってしまうのか、僕にだってわからない。
なるべく傷つけないように、我慢しようと思っていたのに、どうにも堪らない想いが込み上げてきて、強く吸い付いて心臓の上に濃い赤を散らした。
赤い印を裏と表で繋げて、心に鍵を掛けることができたならどれほど安心できるだろう。
もちろんその鍵の所有者は僕だけで、スペアキーの存在は許さない。
「ちゃんと、わかってるもん…」
奈月が僕の頭を掻き抱いて、耳の裏に冷たい鼻先をすりすりと擦り付ける。
「拓也くんは、わたしのこと…きっと許してくれるって、わかってる」
許しを請わなければならないのは僕の方で奈月に非なんてないのに、なにを言っているのだろう。
「それくらい、わたしのことを好きでいてくれてるってわかってるから——」
「好きじゃない」
「えて…?」
とっさに出た言葉に、奈月が瞠目した。
「——好きなんかじゃ足りない」
奈月の眉尻が下がり、頬が染まり口角が微かに上がった。
ホッとしつつ、嬉しさを感じてくれたのだと思う。奈月の些細な変化も見逃したくない。
彼女のすべてを汲み取れるのは僕だけでありたい。
これほどの想いが「好き」で収まるわけがない。けれど、「愛してる」とも違う気がする。
純粋な愛ならば、こんなに心が痛むことはないはずだ。
誰か、僕のこの気持ちにぴったりと合う言葉を教えてほしい。
でも、誰も教えてはくれないから、愚かな僕は奈月の身体に刻み込む。
例え彼女が僕を見放しても、奈月の身体だけは僕を忘れないように。
「んっ……拓也くんの…またおっきくなってきてる…」
乳房の形を変えているうちに、奈月の中で僕の形も変わってきた。
「全部、奈月にだけだよ」
「本当?他の人でおっきくならない?」
「ならない…」
なれなかった。アダルト動画を見たところで、どうにも奈月と比較してしまって勃たなかった。僕は奈月の事を思い浮かべながらでないと、自慰行為すらままならない身体につくり変えられた。
「奈月は?他の人で濡れるの?」
「なッ…!濡れるわけないよ!」
ぐぢゅ、と腰をゆすって音を立てる。
「おもちゃでは気持ちよさそうにしてたけど?」
「ぁンッ…拓也くんが、使ったから…だもん……」
ずるりと引く。
バイブを引きとめていた肉襞を思い出し、今自分のペニスにも同じように内壁が絡みついて結合部がぷくりと膨らんでいると思うと、一気に血が滾る。
再び突き入れると、ぶちゅ、と到底上品とは言えない音が響く。
「他の人とは使っちゃ駄目だよ?」
「う、んッ…。拓也くんも、だよ…」
さっきはローターを当てていたから思い切り腰を振れなかった。正攻法でイかせるまでは終われない。
引いて、いれる。ずちゅ、ぷちゅ、と淫猥な音が響き「んッッ、ぁあっ!」と、突くたびに洩れる甘い声。
溺れていく。
匂いに、声に、仕草に、表情に、奈月を形作るそのすべてに。
抽挿に合わせて声のリズムも早くなる。
息が上がる。
苦しくなるほどに快楽は増す。
激しい抽挿を繰り返すほどに、さっき中に出した精子が掻き混ぜられて白く泡立っていく。
「く…っ…、やばい…一回イったのに、奈月の中…気持ちよ過ぎる…」
奈月の膝裏を持ち上げてがむしゃらに腰を打ちつける。
ギリギリまで引いて、最奥に擦り付ける。強く…、もっと早く。
「ぁあッ!!んぅ!たっ…くん…深いッ…よぉ!」
「は…ぁ…なつき……きもち…いい?」
僕から滴る汗が奈月の身体に落ちて、その肌を滑る。決して染み込むことなどなく、流れて消えて、見えなくなる。
時々、無性に心配になる。本当は全部演技で、僕の独りよがりのセックスに無理して付き合わせているのではないかと。
だから格好悪いけれど、つい確認してしまうのだ。
「ぁあッん!き…もち、いい…ッ!また…イっちゃ…」
期待通りの言葉をもらえて、調子に乗った腰のリズムが勢いを増す。
「イって……もっと、たくさんイって、奈月ッ!」
パンッ!パンッ!と身体をぶつけ合う音は更に大きくなり、溢れた精液はますますいやらしく、ぶぢゅ、ずちゅ、と部屋に響く。
どうしても先に奈月をイかせたくて、しっかりと身体を密着させて上下に腰を揺さぶり、最奥まで押し付けたペニスの根元でクリトリスを刺激した。
「やぁあッ!奥とそこ…いっしょに…こすったら…んぁぁあッきもぢぃぃよぉ…ッッ!!!」
本当に食べられているかのように、奈月の蜜壁が強い締め付けで僕のペニスを咀嚼してくる。
「ッ、ぁ…イク…!出る…!出すよ……ぐッ…」
「たっく…ん!ぜんぶ…ちょうだい…?…ンっ!あぁぁッン!ィくッ…イくぅ!!!」
どちらが先に弾けたのかわからない。もしくは、二人同時だったかもしれない。
急激な疲労と倦怠感の中でそれを遥かに上回る、麻薬のような、一時の幸福感で満たされた。
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