相思相愛

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相思相愛

 ぷちゅ…ずちゅ、ぐぷゅッ…ばぢゅ!ぱぢゅん!! 「んぅうッ!んぁ!…もっ…やらぁ!ぁあッッんぅイ、くぅ!!」  びくんびくんと大きく背中をのけぞらせてカクカク腰を震わせる彼女。  蜜壁が何度も収縮を繰り返して僕のペニスを美味しそうに咀嚼している。まるで僕から全てを搾り取ろうとしているみたいだ。  それならば望む通りにしてあげようと、更に追い立てる。 「ぃ…イってる…からッ!らめぇっ…!」  僕の屹立が彼女の蜜壺を激しく突いて掻き回すたびに、啜り泣きと喘ぎ声、どちらを優先するのが正解なのかを見失ってしまったような嬌声が響く。  ぱんっ!ぱんッ!と激しく身体を叩きつける音、ギシ、ギシ、とベッドのスプリングが軋む音。  精液が泡立ち、ぷぴッ、ぐぷぅッ、ぶぴゅッ!と、ヴァギナに空気が入り込み起こる卑猥な音。  さっきからこの部屋には、いやらしい音しか響いていない。  きゅうきゅうと締められたことで、再び射精感が込み上げる。 「ぐ…ぅ、イク…また出る、出すよ!あぁッ!」 「待って…ナカはッ…」  彼女の膝裏を持ち上げ僕の肩で固定して、より深く入り込める場所を探る。  対面なのに唇が届かないことが少しもどかしい。  達するためだけに乱暴に彼女の尻を、ばちゅん!ばっちゅん!と数回強く押し潰し、子宮口にペニスの先端を押し当てて、今日だけで既に三回目の欲望を最奥に放った。注ぎ込むだけでは満足できず、塗りつけるようにグリグリと白濁を擦り付ける。  彼女の目尻からは涙が流れている。それが快楽から来ているものなのか、負の感情が混じっているのか、僕には量れない。 ——どうしてこんな風に抱いてしまったのだろう  ぐしゃぐしゃに放った浴衣を見て、罪悪感に押し潰されそうになった。 ◇ 「拓也くんの浴衣姿初めて見た。格好いい!」  頬を染めながら、愛おしい彼女が僕を褒める。 「奈月こそ…めちゃくちゃ可愛い。その色、よく似合ってる」  どこまでも澄んでいる海のような、雲一つない空のような、純真無垢な奈月にぴったりの色だと思った。 「行こうか」  探るようにそっと指を絡めて、きゅっと握った。  人混みは嫌いだし、お祭りの屋台にも興味はない。花火だって、テレビ画面越しの中継放送で見るだけで全然構わない。  そんな僕だけれど、奈月から「拓也くんと一緒に花火が見たい」と言われたら、お祭りに行かないわけにはいかない。  ちょん、と服の裾を引っ張られながら「浴衣…着てみようかな」なんて呟かれたなら尚更だ。  でも、少し後悔している。こんなに沢山の人がいる中で、こんなに可愛い奈月の、こんなにも綺麗な浴衣姿を晒してしまうなんて、夏の夜の変な虫がたかってくるのではないかと気が気じゃない。 ——自覚はしている。僕は彼女が好きで好きで仕方がない。  ちらりと左隣を盗み見る。いつもはおろしているゆるふわボブの髪の毛が今日はくるりと左サイドでまとめられていて、向日葵の飾りで彩られている。  はらりと後れ毛が揺れた。20センチ差の斜め下を見下ろすと、うなじと浴衣の隙間が覗けて、真っ白な背中のはじまりが視界に入った。 いつも可愛いけれど、今日はいつにも増して色っぽい。 「どうかした?」  僕の視線に気が付いた彼女が、きょとんと伺い見てくる。無自覚な上目遣いに、簡単に射抜かれる僕の心臓。 「いや、……綺麗だな、と思って」  意味もなく自分の後頭部をくしゃりとかき混ぜながら正面に視線を戻した。 「へへっ、嬉しい。今日、浴衣着てきてよかった」  きゅっと鎖骨のあたりが軋んだ。  キュン、なんて優しい擬音では足りない。奈月にときめくたびに、僕の胸はいちいち痛いくらい締め付けられる。  あぁ今すぐキスしたい。できれば舌を入れたい。うなじに真っ赤な痕をつけたい。そして浴衣に隠れている肌にふれて舐めて…… 「…や…くん。…たく…くん!拓也くん!?」 「へっ?」  ぷくりと頬を膨らませた奈月が、キッと睨んで咎めてくる。 「もぉ!今よその女の子見てボーッとしてたでしょ」  確かに呆けてはいたが、それは奈月を思っていかがわしい妄想をしていたから。  宙に浮いた視線の先には女の子たちがいたけれど、正直全く眼中にない。 「ごめん。でも女の子なんて見てない」 「ホント?わたし、妬いちゃうんだからね?不機嫌になっちゃうんだからね?」  こんなに可愛いやきもちなら大歓迎だ。  けれど花火を前に不機嫌になられるのは困る。  こういう時は、本当のことを半分だけ白状するのが一番円滑にこの場を収める方法だ。  そっと耳元に唇を寄せて、内緒話のように囁いた。 「早く、二人きりになりたいって考えてた」  奈月の耳たぶがポッと桃色に染まる。奈月がピアスもイヤリングもしない女の子でよかったと思う。美味しそうに色づく様子を全て眺められるから。  繋いだ手がギュッと握り直された。 「それは……花火を見終わってから、ね」  奈月の望みだから仕方がないけれど、まだ打ち上がってもいないのに、早く終わればいいと思った。 * 「わぁ!おっきい!すごいねぇ、きれいだね」  奈月の少し斜め後ろに座り、花火に照らされる、弾ける笑顔を眺めていた。  花火なんかより、こっちの方がずっと綺麗だ。  一番最後の大きなしだれ柳の花火が散り散りに霞んでいき、最後の一粒のその残滓が完全に見えなくなるまで、奈月は夜空を見上げていた。 「一瞬で儚く消えちゃうんだもん。なんだか切なくなる」  そう。花火は確かに綺麗だけれど、すぐに消えてなくなる。だからそれよりも—— 「拓也くんは、消えないでね。ずっと、ずっとわたしのそばにいてね」  僕の中で絶対に消えることのない綺麗な存在。奈月だけを、ずっと見ていたい。 「奈月から『消えてくれ』って言われない限り、ずっとそばにいる」  くるりと振り返って、奈月がふわりとほほ笑んだ。 「じゃあ、これからもずっと一緒だね」  多分僕は「消えてくれ」と言われても、奈月から離れない。仮に死んで魂だけになっても、奈月にまとわりつく浮遊霊になるだろう。  そんなことを言って気持ち悪がられると嫌だから、いつも半分本心を隠す。 「ずっと一緒にいよう」 *  人混みの中、絶対にはぐれたりしないようにきつく指を絡めて手を繋いだ。 「疲れてない?足、痛くない?」 「ん、だいじょうぶ…」  奈月を家まで送り届けるつもりだけれど、ここから歩いて四十分はかかる。  だったらここから二十分とかからない僕の家で休んでいかないか、と声をかけたかった。  慣れない浴衣と下駄で疲れているだろうし、無理はさせたくない。綺麗な奈月を前にして、何度「泊まっていかない?」という言葉を飲み込んだか数えきれない。  抱きたい。  しかし、今日は、抱いたらきっと止まらなくなる。無理させたくない。堂々巡りだ。 いっそ奈月が「疲れたから休んでいきたい」と言ってくれればいいのに。決定権を彼女にゆだねる  僕は、弱くてずるい。  彼女は僕を優しい人だと言うけれど、奈月から嫌われたくないからいい人のふりをしているだけだ。優しさと保身は紙一重だと思う。 「送る」と「休んでいって」のどちらも言えずにのろのろと歩いていたら、奈月がぱっと手を離した。 「あ、店長。お疲れさまです。…店長も、花火見に来てたんですね」 「おー!なっちゃん。と、彼氏さん?こんばんは」  二人組の男性のうち、ひとりがぺこりと会釈をした。つられて僕も頭を下げる。 「いつも奈月がお世話になっております」  なっちゃんだなんて呼ばれて、内心では腸が煮えくり返りそうだった。  奈月が働いているカフェは同世代の人が多くて、みんなの距離が近いとは聞いてはいたけれど。 「いやーお世話になっているのは俺の方ですよ。なっちゃん、お客さんからも人気があって、彼女目的で来店するお客さんもいるくらいですから」 「ちょっと…店長!そんなことないです!」 「あ、そっか…。彼氏の前でデリカシーないこと言っちゃったな。そんでこんなこと言ったらまたおっさん扱いされちゃうな」  人差し指でポリポリとこめかみを掻きながら、いけ好かない男がそう言った。 「人聞きが悪いです。わたしたちおっさん扱いなんてしたことないですよ。そもそも店長、わたしと七つくらいしか違わないじゃないですか」 「君たちの七歳上っていったら立派なおっさんだろ?てことでおっさんは撤退します。じゃあまた明後日、よろしくな」 「はい。気を付けて帰ってくださいね」 「なっちゃんたちもな」  背中を向けながら後ろ手を振って去っていく、おっさんもどき。  カフェの店長だからか、清潔感があってそこそこ見てくれが良かった。  じわじわと苛立ちと焦燥感と、嫉妬心、汚い真っ黒なドロドロとした感情が侵食してくる。 「仲、いいんだね」  まずい、やめろ、余計なことを言うな僕の口。頭の中で警鐘が鳴る。 「うん。わたしの職場みんな本当にいい人ばっかりなの」  奈月が、放した手を繋ぐタイミングを窺っているのがわかる。 「男も多いんだっけ?」  そもそも手を離したことに気まずさを感じていることも伝わってくる。そのことにすらイライラする。 「うん、女性が六人で、男性は四人。あと店長かな」  ほぼ半々じゃないか。 「…奈月のこと、好きな男とかいるんじゃないの?さっきの男の呼び方も…距離が近すぎる」  言いたくない。違う。こんな自分の小ささをさらけ出すような真似はしたくないのに。 「それは…っ…。店長は絶対にないから、大丈夫。…あと、告白とかは全部断ってるから…。わたしが好きなのは、拓也くんだけだもん…」  どうして絶対にないなんて言い切れる?そんなに細い腕をして、無理矢理迫られたらどう振り切る?  告白は断っている?そもそも僕以外が奈月に恋をすること自体許せない。  好きなのは僕だけ、そうじゃないと困る。  他に気になる男がいると言われたら彼女を閉じ込めて、もう僕以外、菜月の目に映らないようにするだろう。  どうか今すぐ職場を変えてくれないだろうか。 なんて、言えない。  言ったら僕たちの関係が終わる気がする。見放されるのは嫌だ。  あれも嫌だ、これも嫌だ。まるで駄々っ子のようだ。  本当は全部言いたい、でも言えない。  言葉が喉で追突事故を起こしている。思考がこんがらがってクラクションが鳴り響く。  カッとなる、って、こういう状態をさすんだろうな。  一ミリだけ残った冷静な僕がそう自己分析している。  思考とは切り離されてしまった身体が、奈月の細い手首をがっしりと掴んで無理やり引っ張って歩かせる。 「拓也く…どうしたの?どこ行くの?」  目的地は、すぐそばのホテル。今すぐ二人きりになれるならどこだって構わないと、最寄りのホテルに入った。 「待って、わたし…ホントに拓也くんだけだから。逃げたりしないから…歩くの、早いよ」  狭い通路を自分の歩幅で進み、目的の部屋に鍵を差し込み、扉を開けると同時に先に奈月を押し込んだ。  扉が閉まるより先に、後ろから強く奈月を抱き締める。 「だめ…汗、かいてるから…ッ」  構わずにうなじに齧り付き、真っ赤な独占欲を刻む。  まるで羽交締めのように奈月の動作を奪ったまま、浴衣の襟ぐりを引っ張り、前身頃の隙間から右手を突っ込んで乳房を揉みしだく。  浴衣も下着も全部が邪魔だ。着崩れだとか、脱がせた後着付けはできるのかとか、そんなことは一切考えられなかった。  うなじから唇を滑らせて、真っ白な肩に噛み付いた。まるで吸血鬼のように。  もし僕が本当に吸血鬼ならば、奈月の血を吸い尽くしてしまうだろう。  飢えと渇きがおさまらない。 「やっ、痛いよ…」  傷にならない程度に、僕の歯型をつけた。でも、付けてから後悔した。  こんな些細なことで揺らいで、奈月に傷をつける自分が情けなくて。  今付けてしまった所有印をなかったことにしたくて、治療のつもりで舌で丁寧になぞる。 「唾をつけておけば治る」という、間違い甚だしい都市伝説のような行為にすら縋りたかった。  なのに矛盾する両の手はその間、左手で浴衣の前見頃を無理矢理開いて、右手では乳房を揉み続けていた。僕の大きめの手のひらにちょうど合うサイズの奈月の乳房。  汗ばんだ身体が、ぴったりと手の中に吸い付いて馴染む。  弾力のある奈月の乳房を揉みしだいているうちに、後悔よりも興奮の方が上回ってしまい、完全に引くタイミングを失ってしまった。 「あッ、ん……拓也くん、怒ってるの…?」 「……怒ってない」  無性に面白くないだけだ。  ブラのカップを下にずらして、ツンと尖った乳首をキュッと摘まんだ。 「んぁッ…」  甘く甲高い、普段とは違う奈月の声が僕の鼓膜を揺らし、理性を奪っていく。  もっとその声が聴きたくて、浴衣を開いて乳房を取り出した。きちんと着付けられた浴衣では全部さらけ出すことができなくて、右の乳房だけが空気にさらされている。 「あの人とは、本当になんでもな…あぅッ!」  他の男を「あの人」だなんて聞きたくなくて、耳に舌をべろりと這わせた。こうなってしまうと、完全に止められない。  耳を余すことなく舐り、足の浴衣の合わせを強引に左右に捲り上げて太ももを撫でる。  じっとりと汗ばむ肌の上は滑りが悪く、少し手のひらを浮かせながらゆっくりと秘めた場所を目指していく。  辿り着いた肌触りのいい布地の真ん中は、ぐっしょりと濡れていて、ぬるぬるとよく滑る。 「すごい濡れてる。これも、汗?」 「ぁッ、ちが…やぁ、おねがい…まってッ…」  下着の上から手を入れて、蜜口から溢れる愛液をショーツの中全体に塗り広げていく。 「ぐちょぐちょだね…」  わざと耳元で囁くと、とろりとこぼれる蜜量が増した。  それを指先で掬い陰核に塗りつけて、きゅっと摘む。摘んだそばからぬるりと滑り逃げられるからまた摘む。 「やぁ!んッ!だめぇ…そこ、いじっちゃいやぁ……」  びくりと腰が逃げるのと同時にガクッと膝が折れて、奈月が体勢を崩した。肩を掴んで支えて、壁際に誘導する。 「壁に手をついて、お尻をこっちに向けて」 「ぇ…?いや……こんなの、恥ずかしいよ…」  浴衣の裾を帯に引っ掛けてショーツを脱がせ、真っ白な臀部を丸出しにした。柔らかな桃尻を掴んで左右に割り開き、そこにしゃがんで蜜口に舌を入れる。 「やだぁあッんッ!汚いからだめぇッ!」  滴るほどの愛液を、ずずっと音を立てて啜る。  ぷくりと膨れてきたクリトリスを指先で往復させて何度も弾き、舌で蜜壁をぐるりと舐めとり丁寧にほぐしていく。  奈月の、蒸れた濃い匂いが鼻腔に充満して、痛いほど勃起しているのがわかる。  いつでも奈月の匂いを思い出せるようなりたい。  もっと強く全ての感覚を拾いたくて、犬が雪に喜び顔を埋める時のように、ぐりぐりと左右に顔を振りながら押しつける。 「んぁあッンッ!」  ギュッと舌が締め付けられ、奈月がビクンと腰を引く。  ぬぽっと抜けてしまった舌には、蜜口と繋がるきらりと光る糸が絡みついている。  口の周りをペロリと一周舐め回して、顔についた愛液は奈月のおしりの一番柔らかい部分に擦り付けて拭った。  本当は全部飲み干したいけれど、なかなかそれは叶わない。  壁にぐったりともたれかかる奈月に背後から覆いかぶさり、蜜口にペニスの先端をあてがい一気に奥まで突き入れた。 「んぁッッ!!」  ぎゅうぎゅうと締め付けてくる奈月の肉襞が、また達したことを教えてくれる。 「ぁあっ…奈月んナカ、気持ちいい…やばい…溶けそう」 「や…まっ…て、イった…ばっかり、なの」 「無理…気持ち良すぎて勝手に腰が動く。は…ぁ」  じっとしているなんて不可能だった。僕の意志に反して腰が勝手にグラインドしてしまう。 「やぁ…ッ、たっくんの、奥に…あたってるッ」  奈月はドロドロにとかされると、僕をたっくんと呼ぶ。  普段は子どもっぽいから恥ずかしいと抗議するけれど、ぐずぐずになった奈月から呼ばれるのは、名前を呼ぶ余裕がなくなった証だと思えるから嬉しい。 「奈月…、奈月のここに入れるのは僕だけだよ?」 「うん…、たっくん…だけ…、好きなのは、たっくんだけだからぁ」  目に張った水の膜で、奈月の瞳がきらきらと揺れて動く。  紅潮した頬に、熱い吐息で熟れた唇。カクカクと震える腰が僕を呼ぶ。  ずるりとペニスを引いて、強く穿つ。また引いて、穿つ。  ぱんッ、と身体がぶつかり合う音と、ぶちゅ、と愛液が内側から追い出される音がなる。同時に「ぁあッ!」と奈月の嬌声が響く。  もう、それしか考えられない。  ぱん、ぱんッ、ばちゅ!ばちゅん!  一気に加速する抽挿。  ずちゅ、ぐちゅ、ぷちゅ!ぶぢゅっ!  溢れる蜜が掻き混ぜられる音。 「んッ!ぁあ!んぁ!たっ…くぅん!」  奈月の甘い声。  下から押し上げるように何度も奈月の尻を潰す。 「くっ…イク…出る、奈月ッ」  胸を揉みしだきながら乳首をコリコリと摘んで引っ張る。  奈月のあごを親指で押してのけ反らせて、斜め上から唇を塞いだ。呼吸をするので精一杯で、飲む事を忘れた唾液もそのままに舌をねじ込み絡め取る。 「んんッッッ!」  きゅうぅぅ、と奈月の蜜壁がうねる。ぐっ、ぐっ、と二、三度更に強く押し上げて、最奥で果てた。  ドクドクと溢れる精液を注ぎながらするキスが最高に気持ちがいい。  奈月の舌を吸い、口内に連れ込んで食べるように貪る。  口の周りは互いの唾液でぐちょぐちょに濡れ、下の口は互いの精液でドロドロになっている。  全身から噴き出すようにかいている汗で、濡れていない場所がないのではないかと思うほどだ。 こんなになっても、僕たちはまだ別々で、一つに溶け合うことはやっぱりできない。 「拓也くんの…ナカで、びくびくしてる……」 「駄目だった?」 「………だめ、だよ」  俄に苛立った。確かに同意は得ていないが、僕はずっと奈月と一緒にいるつもりだし、奈月だって僕だけだと言ってくれていたのに。 「気持ちよかったでしょ?」 「でも……」  わかっている。僕の言い分は身勝手で、これは暴力と変わらないと。わかっているのに止められない支配欲が暴走する。 ——本当は僕と別れる可能性を考えているんじゃないの?  最悪な質問が頭をよぎるけれど、怖くて聞けない臆病な自分に辟易する。  ずるっとペニスを引き抜いて奈月の浴衣を脱がせる。  僕が着ていた浴衣もほとんど羽織っているだけの状態だったのを、全て脱ぎ捨てた。  奈月の腕を引いて、ベッドサイドに座らせた。 「僕とのセックス、嫌だった?」 「っ違うの!嫌じゃない……いやじゃない、けど」 「中に出したのが駄目だった?ずっと一緒にいてくれるんじゃないの?」 「そうだけど…でも」 「ごめん…。わかってる。順番が違うって本当は僕もわかってるんだよ。だけど」  その時、放っていた奈月の巾着バッグの中で携帯電話の音が鳴った。奈月の代わりに取り出して渡すときに、画面に映る『店長』という文字が目に入ってしまった。 「出たら?仕事の電話でしょ?」 「で、でも」 「勝手に中に出して本当ごめんな。全部掻き出すから」 「え…?」  ベッドサイドに腰掛けたままの奈月の前に座って、膝を左右に押し開いた。  僕の目線のすぐそこに、奈月の秘めた場所がある。まだ全く乾いておらず、テラテラと濡れて光っている、そこ。  真ん中の縦筋に指を這わせて、くぷりと入っていくところに人差し指と中指を挿し込んだ。 そのまま内側でくぱっと指を開いて、さっき出した精液を掻き出す。どろり、と僕の汚い欲望が流れ出てくる。 「ぁ…んっ、拓也、くんッ…」 「電話、出なよ」  掻き出しつつ、ぐるりと擦って塗りつける。真っ白な精液を、真っ黒な心で。  ぐぢゅ、ずちゅっ、と指を動かすたびに淫猥な音が鳴る。 「んんぅッ!出られない…よぉ!」  電話の音が止んだ。  けれど、僕の頭の中の警鐘音は響いたままだ。早く自分のものにしないと誰かに取られるぞと、もう一人の僕が囁く。 「ねぇ、本当はまだ足りないんじゃないの?奈月のここ、物欲しそうにひくひくしてるよ」 「だって……たく、やくんが…ん、やらしいこと…するから…」 「奈月のせいだよ」  奈月が僕を狂わせる。  他の誰を相手にしても、理性を見失うことなどなかった僕が。奈月だけには自制が効かなくなる。 「ほら、こうなるのも奈月にだけ」  奈月の前に立って、また熱を持ち始めた自身を見せつける。 「わたしに、だけ?」 「そう。もうこれは奈月以外に入ることはないんだよ」  上目遣いで、大切なものを扱うように、そっと僕のペニスを握る奈月。  ゆっくりと舌を伸ばして、ちろりと鈴口を舐める。 「汚いから、しなくていい……」  しなくていいけど、してくれたら嬉しい。 「拓也くんのは、汚くないよ」 「……僕も、奈月に同じこと思ってる」  でも、僕はやっぱり汚いと思う。卑怯な方法で、奈月を自分に縛り付けようとしているのだから。 そして、僕は弱い。汚い自分も、全部奈月のせいだと責任転嫁している。 「んむッ、ンっ、んぅ…ん」  くぽっ、ぐぽっ、と僕のペニスを懸命に頬張る奈月が愛おしくて、すりすりと親指で耳を撫でた。  ぐしゃりと乱れた髪の毛を手櫛で整える。折角セットしてくれた髪型も台無しだ。  けれど、こんなに乱れている彼女を見られるのは僕だけなのだと、綺麗に整えられた奈月を見るよりもずっと興奮する。  舌を絡めて、ちゅうちゅうと吸ったり、裏筋を舐め上げたり、僕を気持ちよくしようとしてくれるその気持ちが嬉しくて堪らない。「美味しい?」と、聞きたかったけれど、それは流石に我慢した。 「は…、気持ちいい、奈月…そんなにされたら、イきそう」 「んッ、いいよ」  その時、ピロン、とメッセージの通知音が聞こえた。  奈月の携帯電話だった。画面には『店長』の文字と『シフトについて』と、仕事の連絡が書いてある。ビクッと奈月の動きが一瞬止まった。  しかし、すぐに口淫を続けようとする奈月。  彼女の口からペニスを引き抜いて、座っている奈月の尻を、ベッドサイドのギリギリ淵まで引き寄せる。 「やっぱりイクのは奈月のナカがいい」  さっきの軽薄な謝罪なんてすっかり忘れてしまった僕は、奈月の背中をシーツに沈ませて、蜜口にペニスの先端をくちくちと擦り付けた。  熟れた果実のように真っ赤に膨れたクリトリスに、カリ首を引っ掛けたり裏筋で擦ったりしながら刺激を与える。 「……んんぅ…」  手の甲で口を塞ぎながら身を捩る奈月に問いかけた。 「嫌?嫌なら、もう挿れない」  ぐちゅ、くち、くちゅ、と溢れる蜜がまた増した。擦れる音が耳を刺激して、この先の快楽を期待させる。 「ふ…ぅ…、い…れて、拓也くんの…挿れて…ほしい」 「なにを挿れてほしいの?」  両腕で顔を隠した奈月が、小さくくぐもった声でつぶやいた。 「ぁ……たっくんの……ぉ、ちん、…ちんを……」  胸がぐっと締め付けられて、愛おしさが募る。  こんな恥ずかしい言葉でも、僕のためならと無理をして言ってくれる奈月が可愛くて仕方がない。  無防備な脇の下をれろりと舐め上げると「ひゃッ」と可愛い悲鳴をあげて、奈月が顔を出した。 「かわいい…もう、全部が可愛い。奈月…好き、大好き」  まるで酩酊しているかのような告白をしている自覚はある。実際、酔っているのかもしれない。  甘くて濃い、蠱惑的な匂いが充満したこの空気と、目の前の恋人に。  食べるように唇を貪る。  舌を奈月の口腔に忍ばせるのと同時に、ペニスを彼女のナカに押し込んだ。 「んんッ!」  ギュッと目をつむり苦しそうに歪むその顔を、ゼロ距離で見つめる。  口の中も膣内も、奈月の身体はどこもかしこも気持ちがいい。  一心不乱に腰を振りまくる僕は、傍から見ていると滑稽に映るのではないかと思う。  けれど、そんなのも仕方がない。理性もなにもかも、この愛しい人から奪われるのだから。  ずっとキスをしていたかったけれど、もっと奥まで入りたい願望が勝った。  奈月の膝裏を持ち上げて、その下に腕を差し込んで、根元までしっかりペニスを押し込むことができる体勢を探る。 探っている途中で、びくりと奈月の腰が浮く場所を見つけた。  いやいやと頭を振りながら「そこ、だめ…深い…」と懇願するように涙を流す奈月。 啼かせたくて仕方のない僕は、当然のようにそこに腰を打ち付けた。 「んぁッッ!やらぁっ!そこ、おかしくなるからぁッ!」  僕に狂ってほしいのだから、願ったり叶ったりだ。  さっき中に出した精液がまだ残っていて、ぶぴゅ、ぐちゅ、ずぢゅッ、とより卑猥な音を立てる。 「く…きもちいい、奈月んナカ、熱くて狭くて…出たくなくなる…」  出たくない。ずっとここにいたい。  なのに、またすぐに出そうになる。  奥へ、もっと、もっと奥へ。  そう思って床を蹴る足裏に力を入れたら、汗で滑ってしまった。 「あぁッっン!」  腕の力で身体を支えたけれど、体重のほとんどをかけてプレスするように奈月を押しつぶしてしまった。  その弾みでペニスが今までで一番深いところに刺さり、子宮口にコツっと先端が当たる感覚がした。  奈月の肉襞がギュウっと締め付けてくる。急激な射精感がこみ上げてきた。 「あ、ここ、気持ちいい。ね、なつき…きもちいいね…」 「ぁあ!ンッ…たっく、ん、きもち、いい…きもちいい、よぉ!」  体重をかけたまま、ばっちゅん!ぶぢゅん!と今までより激しく奥に打ち付ける。 「出る……イク…イ、ぐっ…」 「わたしも…もぅ、イクっ…ぁあンッ!」  奈月がまた強く蜜壁を収縮させはじめたのと同時に、最奥で白濁を放った。  奈月の恍惚とした事後の顔が可愛くて、汗で顔に張り付いた髪の毛を手櫛で梳いてキスをした。  可愛い、好き、愛してる。  そう囁きながらキスを繰り返しているうちに、奈月の中で萎むはずのペニスがまたすぐに熱を持ち始めた。 「ふぇ……?」と、可愛い困惑を見せる奈月をよそに、抜かないままズリズリとベッドの上に押し上げて、何度も体勢を変えて時間をかけて抱き潰すように三回、四回と、奈月の中に精を放った。  気を失うように眠ってしまった奈月を何度も撫でながら、「ごめん、本当にごめん。重くてごめん。こんなに好きで、ごめんな」繰り返し、無垢な寝顔に謝った。  そして、拭うことのできない後悔を抱えたまま、いつの間にか眠りに落ちたのだった。
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