2.私の推し、完璧なんです。

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

2.私の推し、完璧なんです。

私…北村杏奈は、絵に描いたような平凡な中学生。最近よくいる隠れオタクである。ちなみにスクールカーストは1.5軍〜2軍の中間くらい。部活は吹奏楽部で、委員会は図書。この図書委員会に私の推し先輩…そう、先程腹チラのファンサを私にしてくれた花村樹先輩がいるのだ! 実はこの人、校内ではかなり有名人である。イケメンで勉強も出来て運動もできる。これだけ聞くと「なあんだ運動部の1軍か」などとやっかむ人がいそうなものであるが、彼をやっかんでいる人など聞いたことがない。というかいないんじゃないだろうか?まずまず花村先輩は運動部の1軍は無い。彼は、帰宅部だ。 帰宅部なのに有名な理由? それは彼が脅威的なピアノの腕前の持ち主だからだ。 彼は全国ジュニアピアノコンクールなるもので中学2年生の頃最年少記録で優勝しており、まあつまり全国屈指の腕前なのである。最初に聞いたときは凄すぎて言葉も出なかった。 しかし本人はすこぶるクールで感情がまっったく表に出ない。故にファンは多くない。というかほぼいない。隠れファンとしてはありがたいのだが。 さて、話は変わり、初回の委員会時に図書当番の曜日が決まり、曜日ごとに打ち合わせをすることになったときのこと。班長の花村先輩は、ひとりひとりの名前を確認していた。そして私の方を見て、ふっと目尻を緩めたのだ。 「北村さんか。俺と名前が似てるな」 花村先輩の緩んだ目と私の見開かれた目がバチッと合った。ここ大事である。その瞬間を遠赤外線カメラで捉えたならば、綱引きの綱のごとくしっかりがっしり繋がった(一方的な)熱い視線が交わされていたことがわかるだろう。それくらいはっきりと目が合った。 そして私はその瞳に一瞬でテクニカルノックアウトされた。 なんて綺麗な目の人だろう…。 その瞬間から花村先輩は私の大好きな推し、見るだけで幸せになれる大好きな推しなのである。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!