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(一・二)故障かな?
洋子が自分の部屋に戻った後、健一はお父さんに言いました。
「お父さん、ぼくもっと、戦争のことが知りたい」
お父さんは冷やかすように答えました。
「おっ、さては洋子に刺激されたな」
「関係ないよ、あんなやつ」
健一はまっ赤な顔をして、否定しました。
「そうか。でもいいことじゃないか。お父さんが教えてあげてもいいけど、折角だから、自分で調べなさい」
「ええっ、ぼくが調べるの」
健一は面倒臭そうです。
「ああ。お父さん、今夜は疲れてて、ふわあーーっ、眠いんだよ」
わざとらしく欠伸してみせるお父さん。
「わかったよ。調べりゃいいんでしょ」
でもどうやって?
戦争の本なんて、我が家には有りません。そこでお父さんは言いました。
「お父さんのノートパソコンを貸してあげるから、ネットで調べてごらん」
お父さんのノートパソコンを受け取る健一。
「操作で分からないことがあったら、ママに聞けば分かるから」
「はーい」
こうして健一は、お父さんのノートパソコンと共に、自室に戻りました。
ノートパソコンを自分の机に置いて、じっと睨めっこ。お父さんの話では、充分に充電してあるし、ネットにも無線で自動的につながるそうです。つまり電源ボタンをONすればいいだけ。時計を見ると、午後九時を回っていました。一時間もあれば調べられるだろうと、健一は早速ノートパソコンの電源を入れました。
ところがです。いつまで経っても、画面はまっ暗なままでした。電源が入ったことを示す緑のランプは、確かに点っているのに。
おかしいなあ?
健一は早速お母さんを呼びました。
「どうしたの?」
事情を説明し、今度はお母さんにやってもらいました。けれど結果は同じでした。
「故障じゃない?お父さんのパソコンだし」
「ええっ。ぼく、がっかり」
肩を落として健一は、じっとまっ黒な画面を見つめました。
「お父さんもう寝てるから、明日にすれば。珍しく健ちゃんが勉強熱心だから、パソコンもビックリしたんじゃない?」
「そんなあ!お母さんまでひどいよ、みんなでぼくをからかって」
健一は情けなくて仕方がありませんでした。折角一生懸命戦争のことを調べて、みんなを見返してやろうと思ったのに……。でも故障では、どうにもなりません。お母さんはさっさと、健一の部屋から出て行きました。
健一は椅子に腰掛け、まっ暗なままのノートパソコンの画面を恨めしそうに、じっと見つめました。
こんな時に故障なんて。お父さんのパソコン、ポンコツだなあ、この役立たずめ。丸で、ぼくみたいじゃないか……。
健一は苦笑い。ところがその時です。突然ノートパソコンの画面が、ぴかーっと光りました。
「うわーっ、まぶしい」
ビックリした健一は手で目を覆いながら、大声で叫びました。
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