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捕獲
(まだ、あの人いるかしら……)
マデリーンは、ヨシュアの事が気になり海辺に戻って、夜空を見上げていた。
空は、彼の瞳と同じ深い青色を湛え、吸い込まれてしまいそうな程美しい。
ヨシュアの事を考えると、胸が苦しくなる。ただ、その気持ちが何なのかマデリーンはわからない。少なくとも、ルースといる時には、感じたことないものだった。
「マデリーン!」
振り返れば、ヨシュアが、褐色の髪を浜風に乱れさせながら、砂浜に立っていた。その隣には金色の髪の女性がいる。
「俺の妹の、サマンサ」
「初めまして、人魚さん」
サマンサがマデリーンに挨拶をした。
「ねぇ、よかったら、こっちで、お話ししない?」
何もかもが、初めてのマデリーンは、ドキドキしながら、サマンサの言葉にしたがった。
そして、砂浜まで上がってきたマデリーンを見下ろしながら、ヨシュアが静かに言った。
「マデリーン……」
一瞬何が起こったのか分からなかった。頭に激痛が走り、マデリーンの意識は真っ白になった。
マデリーンの頭へ石を打ち付け気を失わせたヨシュアは、サマンサのマントにくるみ、家に連れ帰った。そして、居間の床に寝かせ、猿ぐつわをはめると、ロープで、マントごとマデリーンを縛りつけた。
気を失っているマデリーンを眺めながら、サマンサが呟いた。
「海からあがった途端、人間の足になるなんて」
マントからは、人魚の尾びれではなく、人間の足がのぞいている。
「兄さん、これじゃあ、人魚とは言えないわ」
「ああ、どうしよう!とにかく、親方にお願いしてみるよ。人の姿をしてるんだ。上手くいけば、お前と交換できるかも知れない」
その時、サマンサの瞳が大きく見開かれた。
「みて、兄さん!」
「嘘だろ!」
床に真珠が数粒、転がっていた。
「どういうことだ?」
マデリーンの頬に、涙の筋が見えた。
「この子が流した涙が、真珠に変わったってこと?」
サマンサは首を傾げながら、床に転がる真珠を拾い上げ、手に取った。
「やっぱり……真珠よ」
「信じられないな……でも間違いなく真珠だ。人魚の姿じゃなくても、これなら親方と、交渉できるぞ!」
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