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旅立ち
「のこのこと、何しに来やがった、人間めっ!!」
ルースには、浜辺にたたずむ、女に、見覚えがあった。
男と共に、真珠貝を探していた女だ。あの金色の髪は、そうに違いない。
浜辺に近づいたマデリーンは、あいつらに、拐われた。
この辺りの、人間は、船乗りが多いからなのか信心深い。決して海辺へ、近づくことはない。それなのに、あの男と女は、真珠貝を探して海辺を、散策していた。
きっと、そうだ、あいつらが、マデリーンを。
探す当てもなくなり、ルースは、もしやと思い、浜辺を覗きに来ていた。
ルースが、ザブンと、海面へ浮き上がると、女は、こちらに気が付いた。
「……マデリーンは、無事よ」
女は言うと、海の中へ、ザブザブと歩んで来る。
「おい!」
(人間は、水の中では息ができないのだろ?)
ルースは、女が何をしたいのか、わからない。
しかし、その答えを、彼は、すぐ知ることになる。
見た事もないような綺麗な尾びれだった。
女の足は、海水に漬かると、みるみるうちに、その髪の色と同じ、金色に光る尾びれに変わった。
「私……」
戸惑うに女にルースは、手をさしのべた。
「僕と一緒に行こう、話を聞かせてくれる?マデリーンのこと、そして、君のことを……」
ルースの差し出した手を、サマンサは、迷うこと無くギュッと握り、二人は、海の奥深くへと潜って行った。
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