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◇◇
十二月二十四日、二十五日の二日間に渡って、東雲律のクリスマスコンサートが行われる。
クリスマスを律と一緒に過ごせる。初めての試みに律のオタクはその日を待ち侘びていた。
発表があってから、僕はいつも通りチケットの抽選に応募することすらしていなかった。だから今頃は律のファンサやセトリについて、SNSに流れてくるレポを家のベッドに横になりながら楽しみにしているはずだったのに……。
目の前の光景に絶望する。
「帰りたい……」
「紡がそのテンションで、俺はどうしたらいいんだよ」
「奏は僕の分まで目に焼き付けといて」
「何でだよ」
大勢の人で溢れかえるドーム前。
律のクリスマスコンサートが行われる会場に僕と奏は立っていた。
――クリスマスコンサート、見に来てよ。
そんなお願いをされるのは全くの予想外で、最初は無理だと首を横に振ろうとした。
アイドルの東雲律にはまだ微塵も慣れていないし、現場に一度入ってしまったらどんどん欲が出てくるから控えていた。
だけど、「あーあ、紡は俺の誕生日を忘れちゃうし、願いも叶えてくれないんだ」なんてわざとらしく拗ねたように言われてしまっては、断ることは不可能に近かった。
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