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画面の向こうに恋をした
サラリーマン、学生、OL。
ありとあらゆる人に紛れて、ホームに降り立つ。
乗降者数がとにかく多いこの街で、僕のようなちっぽけな存在を気にするひとなんて誰もいない。
道行く人は先を急いでいて、ひとり取り残されたような気持ちになる。
どんどん追い抜かされながら改札を出て、かの有名なスクランブル交差点に向かえば、でかでかと飾られたポスターに目を奪われる。
――律だ。
思わず、足を止めてしまう。
邪魔だなぁと足早に通り過ぎていくサラリーマンに舌打ちをされるけれど、そんなことはどうでもよかった。
無造作に黒髪を遊ばせて前髪をセンター分けにした中性的な男が、青いバラを咥えている。
跳ね上げたアイラインが扇情的で、挑戦的な視線を送る姿は世界を虜にする絶世の美男、そのもの。
「20th Single, 5/11 Release」と書かれたそれは、律の記念すべき二十枚目のシングルの発売を宣伝するためのものだ。
無意識にため息が出てしまう。
そんな浮世離れした美しさを放つポスターを前にしても、都会の足並みは止まらない。
東雲律。僕の神さま。
いつか、貴方と一緒に歌うことができたなら――……。
ただひとり、僕だけがいつまでも律の前に佇んでいた。
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