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役に立たない能力だ、と馬鹿にされてきた。
小鳥を歌わせる。火を踊らせる。水を持ち上げる。
けれどどれも、複雑な事や大掛かりな事は出来ない。アートの才能もない。手遊びのような事だけだ。
けれど今だけ。
戦火で廃墟になった町にうずくまる人々に、ほんの一時の笑顔が戻るなら。
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そのスライムは『珍しいが役に立たない』と粗末な檻に入れられ、店の奥に放置されていた。
微弱な雷を帯びているが威力が弱く、警備にも使えない、触っても不快なので愛玩にもならないと。
しかし異世界から来た俺には何物にも替え難い相棒となった。
これでバッテリーに充電ができる!!
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ノイズキャンセリングのイヤホンを買った。すると微かな声が聞こえた。
『誰か気づいて、誰か』
どうやら迷子の子猫を心配する幽霊のようだ。
『私達の声は小さすぎて気付かれないの。あなたには聞こえるのね』
そうか、雑音が消えたから。
子猫を保護し、教えられた家に届ける。
イヤホンは捨てた。
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夏休みの宿題を7月中に終わらせろ、と両親から言われ頑張った。特別な旅行と伝えられた、わくわくの当日。
「昔、父さんと母さんが世話になった所だ」
荷物を背負った僕の足元に魔法陣が現れる。
「私達の名前を出せばいいからね」
「帰る方法は自力で見つけるんだぞ」
ちょ、僕一人で異世界転移!?
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神社のすぐ横に古くからある小さなうどん屋。
ここで食べればご利益がある、と客が絶えない。店に出入りする際は一礼するマナーがいつしか定着するほどだ。
実際、ただのうどん屋なのだが……店を貫通して生えたご神木を切らずにいた、ご先祖の商才には恐れ入るばかりである。
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毎夜毎夜、花火があがる。少し離れた所にある娯楽施設のものだ。
「きれいだねえ」
幼子が言う。ここからは見えない花火。思い出の中のそれを眺めながら私が毎晩呟いていたから、この子も音を聞けばそう言うものだと覚えてしまったようだ。
……ここから出たい。この閉ざされた部屋から。
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異世界にも諸々の宗教がある。商業の神、農業の神、学業の神。割と現世利益メインだな、ここ。
善き行いをする者は調和の神が統べる天国へ行けるらしい。これはどこも変わらないな。
悪しき行いをする者は、魔物になり冒険者用ダンジョンで永遠の再生と討伐を繰り返す。地獄は現世にあるのかよ。
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様々なスキャンダルが飛び交う昨今、芸能人専門のメンタルクリニックができた。
芸能記者にも決して情報が漏れない理由は『傾聴』の訓練を受けた元ヤクザカウンセラー。元締めに絶対服従の彼らは、患者の秘密を厳守する。
患者は洗いざらい吐かされると評判だが、対応は思いがけず優しいとか。
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「3月14日って結局、何を贈る日?」
「決まってないよねー」
何年も付き合い続けて、お互いへの贈り物さえこんな緊張感のない会話になる私達。いつまで続くのかな、この関係。
「ホワイトデーってくらいだから、白いものがいいと思って」
彼は鞄から一枚の紙を取り出す。
「この空欄、一緒に埋めない?」
まさかの婚姻届。
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あるよな。召喚先の文明が遅れてるとか、主人公が卓越して強い力を持ってるとか。最近流行りの冒険譚のお約束。
「どうかあの魔物を倒してもらえませんか」
俺が来たのは小人の世界。現地民の言う『魔物』は猫サイズ。俺のお握りは彼らの食糧難を救ったが、俺なんか魔神扱いされてない?
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