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「優一。」
「ん?」
「ワガママ言わないって言ったばかりなんだけど、気持ち悪い。吐きそう。」
口をへの字に曲げ、つらそうに眉を垂らす絢人に笑みをこぼしつつ、少しだけ我慢してと諭して抱き上げてトイレへと連れて行く。
トイレに顔を埋めてしまう絢人の背中をさすりつつ、そんな姿さえも愛しくて口角が上がるのを止められない。
「絢人は可愛いね。」
「吐いてる奴に言う言葉じゃないだろ。」
「可愛いよ。おさまりそう?」
「まだ。」
そう言ってえずいてしまう背中を擦り、落ち着くまで付き合った。
その日は絢人の介抱で一日潰れたが、それでもその時間全てが幸せだった。
絢人の寝顔を眺め、水が欲しいというままに与え、お腹が空いたという言葉にご飯を作った。
そうやってあれして、これしてと前みたいに言われるのが嬉しくて、染み付いているワガママに気づいていない絢人が愛しくて、その合間に素直に一緒に寝ようと誘う絢人が堪らなく愛らしくて、今死んでも悔いは無いほど幸せだった。
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