14人が本棚に入れています
本棚に追加
もともと梨々香は祈のことを嫌いだったわけではない。普通にクラスメイトとして、ほかの子と同じように接していただけで、彼女に対し大きく感情が動くことはなかった。今思えば、それはつまり景色と同じ。代わり映えのしない教室の風景のひとつ。前の席の子というだけの、いてもいなくてもどうでもいい存在。
みんなに平等に優しく接しているつもりでも、実のところ自分はひどく冷たい人間だったのだなということに梨々香は祈を通して知ったのだった。
だからといって、今さらどうこうできる状態でもなかった。少し冷たいことを言えばメソメソ泣かれるし、かといって遠回しに友達じゃないんだということを伝えても、祈にはなにひとつ伝わらない。八方塞がりの状態に梨々香がくだした決断は、放っておくということだった。
別になにか危害を加えられるわけではないのだ。話しかけられたら答える、それ以外はこちらからはアクションを起こさない。そう決めた。
最初のコメントを投稿しよう!