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以来、祈は梨々香につきまとうようになった。休み時間に梨々香がトイレに立つと「わたしも行く」と言ってついてくる。移動教室では「一緒に行こう」とついてくる。給食の時も当たり前のように机をくっつけてくる。無論、もともとの梨々香の友達はいい顔をしない。だからといって、祈をはねつけるだけの理由を梨々香はもたなかった。
今までは「朝倉さん」と呼んでいたのに「梨々香ちゃん」と呼ぶようになり、自分のことも名前で呼んでほしいと懇願してきた。けれど、梨々香はただの一度も祈を名前で呼ぶことはしなかった。それが唯一の主張だったからだ。
あなたとわたしは友達なんかじゃない。
そんな想いをこめて梨々香は祈のことを「山野さん」と呼び続けた。
ストーカーとまではいかないにせよ、祈の言動はそれに近いものがあった。校内でのつきまといに加え、祈は梨々香の髪型や持ち物を真似るようになっていった。これにはさすがに梨々香も辟易し「真似をしないで」と言ったことがある。すると祈は、しょんぼりと肩を落とし、さも自分が被害者であるかのようにしくしくと泣いた。
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