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「あ、りりちゃん電車来たよ」
誰かの言葉に梨々香はスーツケースを握り直す。もう、おさらばだ。気分は清々しく別れの寂しさを滲ませる涙など、一粒もわいてこない。
「じゃあ、行くね」
「うん。絶対絶対、連絡してよ?」
「わかった。瑞希も時間ができたら東京に遊びにきなよ」
ぐずぐずと鼻をすする親友に梨々香は苦笑いで背を向ける。これでやっと解放されるのだ。そう思うと、梨々香は今にも大声で歓喜の雄叫びをあげそうで、冷えた手でそっと口もとを覆った。
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