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僕が寝ていたのはフェリクス様がよく利用している別邸にある一室だった。
フェリクス様からこれからはここに住んでいいと言われて、驚いてしまったけれど、公爵家とは話をつけているからと言われたからお言葉に甘えてしまっている。
「フェリクス様はどうして僕が閉じ込められているって気がついたんですか?」
2人で朝食を食べながら尋ねると、フェリクス様が微かに眉を垂れさせて困り顔を向けてきた。
「ある人に聞いたんだよ」
「……ある人?」
「そうだよ。ねえ、ルダ。私はね誰かの手助け無しには君を助けられなかったんだ。それに、君も1人では生きてはいけない。だからね、もっと周りに目を向けてみてほしい」
「……?……はい」
どうしてフェリクス様はそんなことを言うんだろう。
僕が知らない何かがあるのだろうか?そうだとするのなら、それはなんなのだろう。その、『ある人』にも関わってくることなのだろうか。
僕にはまだフェリクス様の言葉の本当の意味が分からない。
「目が覚めてから1週間程経つけれど不自由はしていないかい?」
「皆さんとても良くしてくれますから、不自由なんてしてないです」
あの汚くて狭い部屋で独り生きていた頃と比べると、今の暮らしは天国の様だった。
毎日、温かな食事を口にすることが出来、柔らかいベッド安心して眠ることが出来る。
それだけでも本当に嬉しくて幸せで胸がいっぱいになるんだ。
それに、毎日こうやってフェリクス様は僕と過ごす時間を設けてくれる。
まるで、僕のことを大切な人の様に扱ってくれるから嬉しくて、勘違いしてしまいそうになるんだ。
「今度街に行くのだけどルダも一緒に行かないかい?」
「街、ですか?」
「うん。人混みは苦手かな?」
「いえっ!僕、ずっと公爵家から出てなかったから街の様子がどうなっているのか知りたいです」
「ふふ、じゃあその時になったら伝えるね」
「はい!」
フェリクス様と街に行けるなんて夢みたいで、嬉しくて思わずにこにこと笑みが零れてしまう。
火傷を負ってからは街には行っていなかったし、馬車で見る景色だけでは何が変わってしまったのかも良く分からない。
だから、街の様子を見れるというだけでも楽しみで、舞い上がってしまいそうだった。
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