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数週間経った後、フェリクス様から僕宛にダズリー公爵家で行われるパーティへの参加の招待状が届いた。
ラルがぐしゃぐしゃになった手紙を僕に差し出して来た時にはとても驚いたけれど、中身を読んでもっとびっくりした。僕にパーティーでのパートナーを務めて欲しいと書いてあったから。
あれからラルは僕に何も言っては来ない。
言い合ったことについても触れてこないから僕も何も言わない様にしている。
「お父様が棄てる所だったのよ。感謝してよね」
「……ありがとう」
「……行くのよね」
「……多分」
ラルは僕がフェリクス様と会うことに敏感に反応する節がある。ラルにとってフェリクス様はどんな存在なのかは分からないけれど、気になるのなら最初からラルがフェリクス様の婚約者選びに行けばよかったのにと思わずにはいられない。
「それなら綺麗にしないといけないわよね」
「……え?」
ラルの言葉が理解できなくて聞き返したけれど彼女はそれ以上は何も言わずに部屋から出ていってしまった。
どことなく楽しそうな雰囲気だったなと思う。
最近のラルは少しおかしい。
僕に話しかけてくるのはいつもの事だけれど、少しだけ優しくなった気がする。
それは気のせいなのか、それとも……。
シワシワの手紙に再び視線をやるとぎゅっと唇を噛み締めた。
どうして僕なのかな?
僕でいいのかな?
パーティーのパートナーに選んでもらえたことはとても嬉しい。だけど、それはつまり実質フェリクス様の婚約者だと言っている様なものだ。だから断るべきかもしれないとも思う。
もしも僕を隣に置いてパーティーに向かったら、笑われるのはフェリクス様じゃないの?
でも、彼の隣に立ってみたい。
せめぎ合う想うが僕の心の中で燻っている。
それでも、やっぱり僕は彼に会いたかった。
ただそれだけの理由でいいんだろうか。
フェリクス様にどうしようもなく会いたいし、フェリクス様と話したい。笑顔を見たい。
たったそれだけの自分勝手な思いのために彼の誘いに乗ってもいいかな?
選ぶのは誰でもなく僕だ。
それなら、僕は彼に会いたいと思った。それに、僕が断ったら彼の隣には別の人が並ぶのかもしれないと思ったら嫌だったんだ。
自分がこんなに独占欲が強いなんて知らなかったから、自分でも自分の気持ちに戸惑っている。
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