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〜コーラル視点〜
エスメラルダがパーティーに出席している間、私もお母様に付き添って伯爵家のパーティーへと参加していた。
「見てオスマン様よっ」
「お美しいわ!」
伯爵家のご子息であるトニス様と第2王子のオスマン様は仲が良く、本日のパーティーにオスマン様が参加するだろうと見込んで彼に近づくために参加したご令嬢も多い。
例に漏れず私もその1人。
「退きなさい」
「っ!コーラル様」
邪魔な令嬢達に声をかけると私だと気がついた周りが私を避けて道ができた。
その道を背筋を伸ばして通る。
「オスマン様お久しぶりですわ」
「……ああ、コーラル嬢か。久しぶりだね」
にこにこと笑みを張りつけて挨拶を返してくれたオスマン様に近づくと、恥じらいながらお会いしたかったと伝えた。
そうするとオスマン様が私の手を取ってそこに口付けを落とす。
それに微かに眉を寄せそうになるのを我慢して、私は彼が好き、彼が好きと心に念じながら嬉しそうに笑って見せた。
他のご令嬢も私に続いて挨拶をすれば、やはり彼はそのご令嬢の手を取って口付けをする。
彼は誰にでもこんな感じだ。
あの口付けは彼の私達への興味のなさの現れ。
興味が無いからこそキス1つで簡単にあしらえるし、私達もそれに気が付かずあしらわれる。
美しい顔に回復魔法以外の全属性を使いこなす強い魔力。頭も切れる上に第2王子。そんな有望株をどこのご令嬢も婚約者にと望んでいる。
「コーラル様、エスメラルダ様が……」
オスマン様に更に話しかけようとした時、私の傍付きのメイドが公爵家の使用人からの知らせを耳打ちしてきた。
その知らせを聞いてギリッと奥歯を噛み締める。
知らせを聞き終えた私はオスマン様に1歩近づくとお話をしませんか?と声をかけた。
私はアルステッド公爵家の公爵令嬢であり社交界の赤い宝石と呼ばれている。だから、私が彼を誘っても誰も文句は言わない。
「少しならかまわないよ」
「嬉しいですわ!」
大袈裟に喜ぶふりをする。
彼のことが好きな令嬢の様に振る舞い、周りにも私は第2王子が好きなのだと言いふらしていた。
それは全てエスメラルダのため。
「行こうか」
私の目の前を進んでいくオスマン様の腕に手を回してうっとりと目を細める。
私はオスマン様が好き。
何度も呪いの様に心の中で繰り返す。
そうしなければ今にも卒倒してしまいそうだったから。
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