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お腹が減った。
どのくらいこの部屋にいるのかは分からない。まだ1日も経っていない気もするし、もっと長い時間閉じ込められている気もする。
火を灯してフェリクス様と食べたお菓子を思い浮かべると目の前にいちごタルトが現れた。
それに手を伸ばしてみるけれど、勿論手に入るわけでは無いから余計にお腹が減ってくる。
このままゆっくりゆっくり命を削って行くのだろうか。
何度も何度も幻影の魔法を使ったせいなのか、魔力が底を付きかけていて異様に身体が重い。
耐えきれずに瞼を閉じると、何度目かになるフェリクス様の名前をつぶやく。
「ルダっ!!!!」
そのすぐ後、突然光が部屋へと射し込んだと思ったらずっと会いたいと思っていた彼が部屋の中に入ってきて、ついに幻覚が動き出したのかなってぼんやりとする脳内で思った。
「ルダ、ルダ!魔力がっ……どうしてこんなことに」
聞き心地のいい声だ。
ふわふわとする全身で彼の声を受け止めていると、突然、叩かれた頬に暖かさを感じて、気持ちいいなって頬笑みを浮かべた。
まるで太陽に包まれている様な気分だ。
「ルダ、私と一緒にここを出よう。もう君に辛い思いは絶対にさせはしない」
「……フェリクス、様」
「寝ていなさい」
目元に手が添えられて、その温もりに従って開けかけていた目を再び閉じた。
ふわりと身体が浮く感覚に身を委ねながら、これが夢なら覚めないで欲しいと願う。
「……この子をお願いしますわ」
「ああ、任せて欲しい」
「……私のことは内密に」
「……約束する」
なんの話しをしているんだろう。
フェリクス様ともう1人、聞き覚えのある声が話をしている。
だけど、沈んでいく意識の中では内容までは上手く呑み込めなかった。
何処かに運ばれているのは分かる。
けれど、温かいフェリクス様の熱に包まれているからきっと行き着く先は僕にとって素敵な場所だって確信できて、不安だとは思わない。
「ルダ、私は君を私の手で守っていきたい」
「……ん……」
額に柔らかなモノが触れる感覚がした。
だから、彼の首に抱きついて頬を寄せる。
好き……。
僕のことを癒してくれる、優しい優しいフェリクス様が大好き。
そう思いながら微睡みに意識を預けた。
きっと目を覚ましたら、幸せなことが起きるって確信を持ちながら。
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