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フェリクス様は僕にとって暗闇に差す一筋の光。
彼に出会ってから僕の心は救われたから。
火傷を負った日からずっと暗闇の中を歩き続けているような人生だった。誰も本来の僕のことを見てはくれなくて苦しかったんだ。
どんなに親切にしてくれる人であってもそれは同じ。
幼い頃、怪我をした僕に使用人や周りの貴族たちは『可哀想に』と言っていた。初めて会う人に火傷を見せると嫌な顔をされるか同情する言葉をかけられるかの2択。
みんなが見ているのは僕の火傷であって僕ではなかった。
だけど、フェリクス様だけが僕のことを見てくれたんだ。
僕の話を聞いてくれた。僕が嫌がることはしなかった。僕の好きな物を知ってくれて、それを共有してくれた。僕をパートナーに選んでくれた。
そうして今もこうして僕がフェリクス様を抱きしめることを許してくれている。
フェリクス様は自分のことを何も持たない人間みたいに言うけれど、それは違う。
フェリクス様は人を安心させることが出来る。彼のもつ優しい雰囲気や柔らかな微笑み、ゆったりとした聞き心地のいい声、それら全てが警戒心を解いて彼なら信頼できるって思わせるんだ。
それに立ち居振る舞いは美しくて、それを身につけるのにどれだけの努力をしたのか計り知れない。
フェリクス様は凄い人だ。
僕がフェリクス様と触れ合った期間はまだ凄く短いけれど、それでもフェリクス様が沢山努力をしていることを知っている。
「フェリクス様は凄い人なんですよ」
「……そんなことないよ」
「フェリクス様が分からなくても、僕はフェリクス様の良い所も凄い所も沢山知ってます。これからもっとそれは増えていきます。それに、フェリクス様は回復魔法しか取り柄がないって言うけれど、その回復魔法がどれだけの人を助けていることか」
「……私は……」
「フェリクス様は人を癒すだけじゃなくて、癒した人の人生も救っているんですよ」
フェリクス様が今まで治した人達がどんな怪我を負っていたかなんて勿論知らない。
だけど、僕の火傷を治すことができると彼は言っていたし、僕の右目だって見えるようにしてくれたんだからもっと酷い怪我だって治せるはずだ。
例えば手足が無くなった人、もう時期命の灯火が消えてしまうかもしれない人。
その人達を癒し、その人達に人生を与えている。
それはフェリクス様だけに出来ることなんじゃないかって僕は思うんだよ。
「僕の思っていることをフェリクス様に全部伝えたいけれど、それは無理だから……だから、これだけは知っていて欲しいんです」
「……うん」
「フェリクス様が僕を救ってくれたってことを知っていて欲しいんです。他の誰でもない。フェリクス様だから僕の心も人生も救うことが出来たんだって……」
「……ルダ、私は君のことを本当に助けられているのかな……。私は君のことを守れるのかな?」
「もう、出来てますよ」
泣き出しそうなフェリクス様に笑顔を送った。
歪だけど、僕が出来るめいいっぱいの笑顔。
そうしたらフェリクス様はくしゃりと顔を歪めて、僕を抱きしめ返してから、小さな声で、君を救えてよかったって言ってくれたんだ。
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