6.隠し事の共有

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「ダリウスさんは子供達がフェリクス様のことを話しているって知っていて僕をここに連れてきたんですか?」 隣にいるダリウスさんに尋ねたら、彼が頷いて、そうですって返事を返してくれた。 それを聞いて、やっぱりそうなんだなって思う。 「……どうしてこんなことを?」 「それは本人に直接聞いては?」 「……うん、そうするよ」 治療が一通り終わって周りに誰もいなくなったフェリクス様に近づくと声をかけた。 「フェリクス様!」 「っ!……ルダ?どうしてここに……」 「子供達がフェリクス様の話をしていて、気になってしまったからダリウスさんに連れてきてもらったんです」 「そうだったのか。ここは危ないから移動しよう」 「……はい」 フェリクス様に手を掴まれて一緒に街の中を進んでいく。 ダリウスさんの時には感じなかったドキドキした感じが胸を支配していて、やっぱり僕はフェリクス様のことが好きなんだって自覚させられた。 ダリウスさんは僕達の後ろを着いてきてくれている。 しばらくそのままスラム街を進んでいると、突然10歳くらいの子供が僕たちの目の前には飛び出してきて足を止めた。 「……あんたが聖者様?」 「そんなに慌ててどうかしたのかい?」 フェリクス様のことを赤い瞳がじっと観察するように見つめてから、助けて欲しいって悲鳴のような悲痛な声を上げたその子がフェリクス様の服を掴んで引っ張った。 まるで、早く着いてこいと言うかのようだ。 「治して欲しい人がいるんだね。案内してくれるかな?」 「案内するから早く来て!!」 フェリクス様は突然服を掴んできた少年に怒ることも無く、優しく声をかけると彼の後ろをついて行く。 僕とダリウスさんもそれに着いて行く形になった。 少年に案内されるまま、また街の中へと進んでいく。入り組んだ迷路のような景色の変わらない道を進んでいると、元の場所に帰れるのか不安になってくる。 それなのに、目の前の小さな男の子はそんなこと気にする様子もなくスイスイと進んで、1軒の家の前で立ち止まった。 ひび割れた扉を開けると、石造りの狭い家の中にベッドとテーブルだけがある質素な室内が目に飛び込んでくる。 そのベッドの上に、痩せこけた女の人が横たわっていた。 まるで今にも死を待つばかりだという様に浅く息を吐き出してじっと目を閉じている。 「母ちゃんを助けてくれよ!」 少年がフェリクス様に縋りついて懇願すると、フェリクス様が頷いてから彼女の傍らへと向かった。 そのやり取りを見つめながら、男の子が先程広場で話をしていた子供の1人だと気がついた。 フェリクス様が治療するのを横でじっと見つめている赤い瞳には不安の色が見え隠れしている。 僕はダリウスさんと共にそんな3人を見つめながら、助かりますようにって無意識に祈りを捧げていた。
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