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僕とオスマン様は今初めて出会ったのに、彼を怒らせている原因は何なのだろう。
「……あの……僕、貴方になにかしてしまいましたか?僕の勘違いでなければ貴方と会うのは初めてだと思うのですが」
恐る恐る尋ねると、オスマン様は僕の言葉に確かに初めてだと答えた。
「手を……」
離してくれないだろうか。
仮面が取れてしまいそうで段々と不安になってくる。
「何をしているの?」
オスマン様に、離してくださいって言おうとした時、ここに居るはずのない彼女の声がして驚いた。
「……ラル……」
「その手を離して頂戴」
ラルがオスマン様に怒りを含んだ声でいうと、オスマン様は何故かすんなりと僕から手を離してくれた。
それと同時に逃げるように後ろに下がると、ラルがオスマン様の横に並んで僕の方に視線を向ける。
まるで、お父様と話したあの日みたいだと思った。
「どうしてここにいるの?」
「貴方には関係ないでしょう」
「……そうかもしれないけど……」
双子の妹のことだから気になってしまうんだよ。
オスマン様とどういう関係なのかも、ここに居る理由も。
「行きましょう」
「……ああ」
ラルは僕が話しかけようとするのを無視して、オスマン様の腕に自身の腕を絡めると、そのまま僕に背を向けて2人1緒に歩いて行こうとする。
そんな冷たい背中を見つめながらグッと唇を噛み締めた。
僕達は双子だから、何時だってラルの気持ちは手に取るように分かっていた。それが分からなくなったのは僕が火傷を負ってしまった日からだ。
「……そんなに僕のことが嫌い?」
それはほんの微かな呟きだった。
そのはずなのに、ラルはそれが聞こえたのか僕の方を見てクシャリと泣きそうな顔をした。
「……そんなの分かってるはずでしょう」
「おい、無視して歩け」
ラルが僕にそう答えてこちらに戻って来ようとするのをオスマン様が止めた。
それが歯痒くて、心の中で邪魔しないでってつい思ってしまう。
ラルはオスマン様に言われるまま、また僕に背を向けて歩き出す。
僕は1人ぽつんと立ち尽くしたまま、自身の片割れの消えていく背中をただ見つめていた。
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