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〜コーラル視点〜
私からエスメラルダが閉じ込められていると聞いたフェリクス様は直ぐにエスメラルダのことを助けるために動いてくれた。
あの時の怒りを含んだフェリクス様の顔を思い浮かべては、エスメラルダが愛されていることに喜びを感じてしまう。
エスメラルダを助け出してから数日後に、「保護されたエスメラルダの様子を見に来ないか」と提案してくれたのはフェリクス様だった。
オスマン様と来ればエスメラルダと鉢合わせてもオスマン様に会いに来たと思われるから心配ないと言われて、その話に乗っかったの。
本当に鉢合わせてしまった時はヒヤリとしたけれど、それよりもエスメラルダがオスマン様に酷いことをされていることに怒りを覚えてしまって、頭に血が上ってしまった。
「どういうつもりよ!!」
中庭から離れて、オスマン様が使っている部屋に入った瞬間、声を荒らげてオスマン様へと詰め寄る。
「なんのことだ」
「とぼけないで!!エスメラルダに酷いことをしていたわっ!あの子に手をあげるなんて!」
「お前はあいつのことになるとピーピーとうるさいな。もう少し淑女らしく出来ないのか」
「話を逸らさないでよ!!」
ソファーにゆったりと腰掛けて大欠伸をしているオスマン様の無駄に美形な顔を叩いてやりたくなる衝動を必死に抑える。
エスメラルダはやっとフェリクス様の元で幸せになれるのに、この人が居たらまた怯えて過ごさないといけなくなるじゃないの!って過保護なことをつい思ってしまう。
「あいつは周りが見えていなさすぎる」
「……なにそれ」
「お前は双子の兄に尽くしているが、あいつが1度でもお前に礼を言ったことはあるのか?お前になにか返したことは?」
「……それは……だって、エスメラルダは私に嫌われていると思っているのよ。それに、私自身が嫌われることを望んでいるのだから構わないわ」
「その皺寄せは全部兄上に行くんだぞ。兄上は聖人でも神でもない。あの人は期待されればされるだけ心をすり減らして壊れてしまう。愛する者からの期待に応え続けなければならない気持ちがお前にわかるか?」
「……っ」
確かに私はエスメラルダのことを全部フェリクス様に押し付けているのかもしれない。
だけど、私はっ……
「私はエスメラルダの隣には居られないのっ!私はっ、私は、エスメラルダのことを守れなかったから」
頬を涙が伝っていく。
オスマン様の前で泣くなんて嫌なのに、溢れてきた涙は止められなくて唇を強く噛み締めた。
「泣くと人に見せられない顔になるぞ」
嫌味を言いながらオスマン様がハンカチで私の涙を拭こうとするけれど、私は彼を睨みつけて、触らないで!って声を荒らげた。
そうしたら彼が一つ溜息をこぼして、私のことをじっと見つめてくる。
「そんなに頑なになる理由はなんだ。聞かせてみろ」
数秒私を見つめていたオスマン様は諭すようにそう尋ねてきた。
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