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ラルが僕のために動いてくれていた事実に思い至ると、どうしてもラルと話をしたくなった。
だけど、ラルに直接聞く勇気が出なくて身体は動かない。
「ルダ、こんな所にいたんだね」
「!……フェリクス様」
頭を悩ませていると、薔薇アーチの所からフェリクス様が姿を見せて驚いてしまった。
「どうしてここに……?」
「たまたまルダがここに入るのを使用人が見ていたんだよ。どうしたの?」
悩んでいたのが顔に出ていたのかフェリクス様が僕の隣に腰掛けてからそう尋ねてきた。
僕はどう答えたらいいか思案してから、結局ハッキリと尋ねてみることに決めて口を開く。
「僕が閉じ込められていることをフェリクス様に伝えたのはラルですか?」
「……そうだよ。ルダはそれに気がついてどう思ったの?」
フェリクス様が俯く僕の頬に手を添えてくる。
その手の温かさに目を細めた。
「僕、正直驚きました。ただ、ラルとちゃんと話したいとも思いました」
「うん。ルダがそう思うなら私は応援するよ」
「……でも……不安なんです。もし、ラルがまた僕のことを拒否したら、僕は……」
ラルが僕のことを助けてくれていたことに気がついてしまったから、もしもまた拒否されてしまえば僕は凄く傷つくと思う。
だから怖い。
フェリクス様はそんな臆病な僕をそっと抱きしめて、優しく頭を撫でてくれた。
フェリクス様の胸元に顔を埋めて、良い香りと心地良さに心が落ち着いていく。
「もしかしたら相手も同じことを思っているかもしれないよ」
「ラルも?」
「うん。それにね、ルダが話したいと思うなら話すべきだと思うな。私はルダに幸せでいて欲しい。大切な人達に囲まれて笑って過ごして欲しいんだ。だから、コーラル嬢のことを大切に思うのならきちんと話をするべきだ」
そう言って何度も僕の頭を撫でてくれるフェリクス様から僕は少しだけ勇気を貰った気がした。
「……っ、僕……頑張ってみます」
「ルダなら大丈夫」
そっと僕のおでこにキスをしてくれたフェリクス様に恥ずかしさと嬉しさの入り交じった笑みを返すと、フェリクス様も同じように微笑み返してくれた。
それに更に勇気を貰って、今度こそラルと話す心の準備ができた気がしたんだ。
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