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「田宮に見られちゃったの……薬局であたしが……ナプキン万引きしたとこ」
ミヤは父親と二人暮らしだ。おねしょの件を引きずっていた小五のミヤは、生理用品を買ってほしいと、どうしても父に言い出せなかった。
畳んだトイレットペーパーはすぐに血染めになり、気になって何も手につかない。相談できるほど親しい女友だちもおらず、思い詰めたミヤは町内の薬局で、棚の商品をそっと手提げバッグに入れてしまった。そして運悪く、その現場を田宮に見られたのだ。
田宮はおねしょのネタで頻繁にミヤをからかっていたし、秘密基地で遊ぶ俺たちを遠くからじっと見ていることもあった。もしかしたら薬局で鉢合わせたのも、偶然ではなかったのかもしれない。
「今でも忘れらんない……田宮、すごく嬉しそうにニヤニヤ笑ってたんだ……」
俺は何も知らなかった。気づいてやれなかった。突然俺たちに別れを告げ、田宮に従属するミヤを、俺とナベは冷めた目で黙って見ていた。いや、俺たちは二人して、窮地にいる仲間から目を逸らしていたんだ。
あのときにミヤを救い出せていれば、こんなことにはならなかったのに。
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