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「あたしも、男子だったらよかった」  顔を布団にうずめたまま、ミヤが涙声でつぶやいた。 「男子だったら、田宮(あいつ)にあんなこと、されなかったのにね……」  何を。いつから。具体的な話は聞いていなかったけど、ミヤの嘆きには、長い間屈辱に耐えてきた苦痛が滲んでいた。  何も言えない。言えるわけがない。  重く沈んだ空気を払拭するように、ミヤは頭を上げて笑顔を見せた。 「あたしが男子だったら、ずっとナベとはるちーの仲間でいられたのにな」 「「仲間だろ」」  俺と鍋島は、同時に反論した。それは聞き流せない。譲れない。俺は蓮見安奈というかわいそうな女子のためじゃなく、仲間のためにこの手を血に染めたのだ。  真顔で真っ直ぐに、ミヤを見据える。  驚いた表情で俺と鍋島を順に見た彼女は、くしゃっと顔を歪めてうつむいた。 「あたしも……また、仲間に入れてくれるの?」 「てゆうか、前から仲間だよ」 「ずっと仲間でいると、約束しただろ」 「うん……」   枯れることのないミヤの涙が、うなずくたびに白い布団に染みを作っていく。けれどその口元は確かに、(ほころ)んでいた。  俺は左手、鍋島は右手を。過去をやり直すことのできない俺たちは、震えるミヤの手をとり、仲間の絆を堅く、結び直した。   【了】
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