小四、夏

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「海もあるのに、わざわざあんな森で遊ばなくても」  うちの母親にはケラケラ笑われ、 「どうせ外にいるんなら、もっと体動かす遊びしたらいいのにねぇ」  ナベの母親には苦笑された。  子どもの楽しみなんて、大人になったら忘れてしまうものなんだろう。  他の奴らにも大人にも邪魔されない、俺たちの秘密基地。そこは俺たちにとって、賑やかな海より、涼しい図書館より、広い公園よりずっと、大事で居心地がよかったんだ。 「はるちー、夏休み終わったら塾行くんだって?」  ミヤが、ハーフパンツから出た脚に追加でスプレーをかけながら俺に聞いた。 「うん、新学期から」 「はるちー成績いいのにさ」  唇を尖らせたミヤに、ナベが肩をすくめる。 「はるちーは将来医者になって診療所継ぐんだから、地元の小学校で一番、なんてのじゃダメなんだろうな」 「てゆうか、俺一番取れてないし。今日の国語もナベだけ百点だっただろ」  ナベは国語と社会がべらぼうにできる。算数と理科は俺の方が得意だって自信あるけど、文系はナベにかなわない。 「神々の会話じゃん」  苦笑したミヤが長い手足を伸ばして、うーんと唸った。勉強ではふるわないミヤにだって、誰にも負けない特技がある。
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