小四、夏

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「ミヤ昨日、跳び箱八段飛んだよなー」 「しかも閉脚で」 「リレーはアンカーで三人ごぼう抜きしたし」 「地獄のシャトルランまさかの八十七回」  俺とナベで交互にミヤの伝説を並べると、ミヤの口の端がだんだん上がっていく。 「うへへへへ」 「いやキモいし」 「ミヤきっしょ!」  雑につっ込まれたミヤは、東屋の天井を見上げ、笑顔のままため息をついた。 「お父さんに言われたんだよね。『鍋島(なべしま)君と晴地(はるくに)君は、なんでお前なんかと仲良くしてくれるんだろうな』って」  俺とナベは顔を見合わせた。ミヤの父親は悪人ではないが、デリカシーがない。町内会の集まりで、ミヤが小一までおねしょをしていたと父親が暴露したせいで、ミヤはひどい恥をかかされたんだ。 「はるちーが塾で忙しくなってもさ、遊べるよね? この秘密基地で、ずっと」  いつも元気なミヤだけど、たまにこういう、すごく寂しそうな顔をする。俺はモヤッとして、でも真面目に返事するのもなんだか恥ずかしくて、好きな漫画のセリフを真似て叫んだ。 「あったり前だ! お前は俺の、仲間だーーっ!!」 「はるちー、うるせーよ」  ごん、とナベの手刀が、俺の頭に落ちる。けどやっぱり、その顔は笑っていた。 「ずっと一緒にいるのは無理でもさ、ずっと仲間でいることならできるだろ」
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