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蓮見安奈の自殺
「蓮見安奈が自殺した」
鍋島が告げた訃報に、田宮は目を見開いた。その目のまま睨まれ、俺はうなずいて話を引き継いだ。
「さっき、うちの診療所に運ばれて来たんだ」
「それで、佐野がまず鍋島に知らせた。二人で相談して、ことが公になる前に田宮に知らせた方がいいと思って、ここに来たんだ」
もう俺を「はるちー」とは呼ばない鍋島が、淡々と状況を説明した。俺が知らせた時にはまともに言葉も出ないほど動揺していたのに、田宮家の三和土で隣に立つ鍋島は、すっかり平常心に見える。同じ高校一年生とは思えない落ち着いた態度で、田宮の反応をうかがっていた。
「たぶん今ごろ、学校にも連絡が行ってるだろうな」
それを聞いて不愉快そうに口を歪めた田宮に、やりきれなさが胸に渦巻く。俺は感情を抑え、診療所で聞いた事実をゆっくり伝えた。
「蓮見、妊娠してたらしい」
「チッ」
間髪入れず、田宮が舌打ちをした。
「心当たりはあるんだろ? 蓮見はお前の……彼女なんだから」
「まぁな」
俺と鍋島にチラッと投げられた視線には、優越感が滲んでいた。経験を誇る、低次元な自己承認。
こんな状況でそれか。奥歯を噛んだ俺を見て、鍋島がおもむろに本題を切り出した。
「診療所に担ぎ込まれたとき、蓮見はまだ意識があったらしい。それで佐野は少し、話ができたそうだ」
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