蓮見安奈の自殺

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「は?」  田宮が鋭い視線を俺に向ける。俺が蓮見から何を聞いたのか、気になるのは当然だ。俺は鍋島に倣い、静かに告げた。 「蓮見、俺に言ったんだ。俺たちの秘密基地に、遺書を置いてきた、って」 「秘密基地……?」 「田宮も覚えてるだろ? 俺たち三人が小学生の頃にいつも遊んでいた、森の東屋」 「ああ……あれ」 「俺は、もう何年も行ってないんだけどさ」 「(うち)の裏の森に、まだあるんだ。もうボロボロだがな」  鍋島が、持ってきた懐中電灯を顔の横に上げた。俺もポケットからスマホを取り出し、フラッシュライトを点けて見せる。  十一月の夜九時。街灯のない森の中は、漆黒の闇だろう。 「これから取りに行くんだけど」 「お前にも、声をかけた方がいいと思ったんだ」  俺と鍋島は靴を履いたままの足をドアに向け、田宮を促した。 「一緒に行くだろ?」  蓮見の遺書と聞いて、俺と鍋島だけを行かせるはずがない。その予想は的中し、田宮は無言で踵を返して、奥の部屋からスマホとダウンジャケットを掴んで戻ってきた。
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