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夜の森
暗い森に、落葉を踏みしめる足音が響く。懐中電灯を持つ鍋島を先頭に、俺は田宮の後について秘密基地へ向かった。
毎日のように通った遊歩道。昼間なら子どもの足でも五分、ミヤはいつも走って来てたから二分で着くと自慢してたっけ。
スマホのライトで足元を照らしながら、俺は前を歩く背中に問いかけた。
「田宮さ、蓮見のこと、ちゃんと大事にしてやってたのかよ」
「はぁ?」
「やっぱ……遺書に書いてあることって、人に見られたらやばい感じなのか?」
「お前に関係ねぇだろ」
吐き捨てられた言葉に、吐き気がしてきた。これが、腸が煮えくりかえるということか。
「てめぇ……」
俺が声を震わせると、
「佐野」
先頭を歩く鍋島が、足を止めて振り向いた。
鍋島はいつも冷静だ。その抑えた声が、「こらえろ」と言っている。
「ごめん」
俺が謝ったのは鍋島にだけど、田宮が「フン」と鼻を鳴らす。後ろに砂がかかるよう蹴り上げて歩く田宮と少し離れ、俺はスマホを顎に挟んでポケットから出した軍手をはめた。
懐中電灯の光の中に、古い東屋が見えたからだ。
「着いたぞ」
秘密基地の手前で足を止め、鍋島が低い声で呼びかけた。
「なぁ、田宮」
「んだよ」
「蓮見は、なんで自殺なんかしたんだろうな」
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