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「内部分裂ですか」
「そうだ。わが校のサッカー部が、内部分裂を起こした」
「それはまたどうして」
「戦略の方向性の違いらしい」
「方向性ねぇ」
「明日、取材を行う。今日中に各派閥の主張を把握しておいてくれ」
部長は部室の机にある、A⒋サイズのリーフレットを指さした。
「どんな派閥があるのですか」
「三つだ」
「三つも。一体どんな主張があるのだろうか」
新入記者は資料を読み始めた。
『ボールは仲間党』。
サッカーを行う上でボールは欠かすことが出来ない存在。
だからこそ、丁寧に扱わねばならない。それゆえに、基本、ボールを蹴らず、守りを固めて、相手のミスを待つカウンタータイプの戦術を掲げる派閥。
『ボールは恋人党』
恋人とのひと時は何事にも代えがたい時間である。故に、ボールを蹴る時間を増やすべし。チームプレイを中心にするのではなく、単独プレーを味方がカバーする戦術を掲げる派閥。
『ボールは愛人党』
愛人とは許されない間柄である。それゆえに、熱い思いをぶつけるのが筋。守りに徹するのではなく、徹底的に攻めに回る戦術を掲げる派閥。
新入記者は資料を読み終えた。
「君としては、それぞれの主張をどう受け止める? 」
「うーん、そうですね」
新入記者はしばらく考え、こう答えた。
「とりあえず言えるのは、どの派閥であっても、あのサッカー漫画に多大な影響を受けていることが分かりました」
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