1945人が本棚に入れています
本棚に追加
SSR。
何かの略語であることは、察した。
だが、最初のSがそもそも分からない。
涼は、とりあえず思いつく限りの可能性を探った。
生産管理。
政治資金領収書。
生前整理。
正戦論。
(……うん、絶対違う)
特に正戦論は、正当な原因を持つ戦争だけを合法と認めるという理論。
香澄には決して似合わない言葉だ。
(じゃあ……一体なんなんだ……)
そんなことを、涼が持ち前の頭脳をフル回転させている間に、いつの間にか香澄がソファからいなくなっていた。
「あ、あれ?香澄?」
慌てて涼が香澄を探しに2階に上がると、香澄の仕事部屋から声が聞こえた。
「あ、はい、申し訳ございません、すぐに直します」
香澄の可愛い声に、焦りが入っている。
(誰だ……僕の香澄にそんな声を出させる愚か者は。侮辱罪で訴えるからな)
心の中で、香澄の通話相手へ威嚇してから、涼は扉をノックしてから中に入った。
「香澄?どうしたの?」
「あ、すみません。急に仕事が入っちゃいまして……」
ほんの少し涙目なのは気のせいだろうか。
涼は、香澄をそっと抱き寄せながら、頭を撫でてやった。
「まさか、これから?」
「……明日の朝までに仕上げないといけないみたいで」
本当であれば、そんな仕事は拒否してしまえ、と涼は言いたかった。
でも、香澄は自分の仕事にとても厳しいことも、涼は一緒に暮らしている内に知っていった。
だから、涼はそんな時いつもこれだけを言うようにしていた。
「体、辛いと思ったらすぐに休むんだよ」
「はい。分かりました」
それから、香澄ともう1度軽い、おやすみを意味するキスをしてから、涼はその足で拓人の家にやってきたのだ。
1つは、自分と香澄のイチャラブ時間を毎度毎度邪魔をしてくるSSRの意味を聞くために。
そしてもう1つは、香澄に無茶を強いる電話相手の正体を探り当てるために……。
最初のコメントを投稿しよう!