第1章 SSRって、何?

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 香澄は仕事の研究のために、これらのキャラが出てくるゲームをルーチンとして組み込むことにした。  他の人が書いたシナリオにテイストを合わせなくては、というのが当初の目的だったのだが、このシナリオがとても面白い。  しかも、イラストは神絵師として有名な人達なので、ガチャで出てくる絵をコレクションすることにもハマり出していた。  その結果、香澄は仕事のためと言いつつ、これらのゲームの沼にどっぷり浸かることになってしまった。  だからこそ、香澄には見えてしまったのだ。二次元と三次元の恋愛の決定的な違いが。 「ソシャゲの恋愛は、楽だなぁ……」  ついぼそりと呟いてしまうのは、そのシナリオの先が期待通りの展開をくれるから。  やはり恋愛ゲームをするにおいて、ハッピーエンド以外の展開を望むケースはほとんどないだろう。  メリハリをつける上で、ちょっとした障壁イベントはもちろん生じる。例えばプレイヤーと攻略キャラクターが喧嘩をするなど……。  でも、最終的にはなんだかんだ必ず仲直りできるのが、二次元の優しさだ。  上がる好感度数字には多少の差が生じようとも、取り返しがつかないミスをして好感度0になることはない。  コンシューマーであればそういう仕組みもあるが、リセットして再トライすれば良い。  そういう意味で、二次元の恋愛は気楽なのだ。困った時の攻略サイトという強い味方もあるから。  でも、三次元の恋愛はそうはいかない。  香澄には、いまだに理解できないのだ。  芸能人よりも、二次元のキャラクターよりもずっと綺麗で、完璧すぎる涼が毎日のように自分に 「好きだ」 「愛してる」  と言ってくれることが。  真剣な顔で毎日言われ続ける内に 「もしかすると、先生は本当に私のことを好きでいてくれてるのかな?」  そのように、ほんの少しは思うことができるようになった香澄ではあったが、そもそも香澄を涼が好きになった理由を、香澄はまだ知らない。  そのため、どうすれば涼の自分への気持ちを、そのまま繋ぎ止めておけるのか、攻略法が香澄には見えないのだ。   「どうして、私のことを好きになってくれたんですか?」  涼に抱きしめられている間、何度か香澄は確認しようとした。  けれど、その度に香澄は躊躇ってしまう。  言ってしまうと、この幸せな時間が終わってしまうように、香澄は思ってしまったのだ。  だからせめて、女として愛されるように体だけでも魅力的になりたいと思った結果の、今の仕事量増大計画だったのだ。  涼がそのせいでどれだけやきもきしているかも知らずに。
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