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香澄が、そんな切実な悩みを抱えていることを知らない涼はと言えば、拓人が冷めた視線を送っているのを完全無視しながら、拓人の目の前で調べていた。
立花潤、カミーユ、桜井健一、真田邦彦とは一体なんなのか、を。
「お、俺様キャラ……?」
涼は、聞きなれない単語に困惑していた。
拓人は、その右往左往っぷりがあまりにもうざかったので、仕方がなく自分が今まさに作っているキャラクター設定集を見せてやることにした。
「何だ、これは」
「俺様キャラの説明文。ちゃんと、声に出して、読んでみなさい」
「…………自分勝手、自己中、他人を目下の人間だと考えて扱う……リアルだと……仕事ができないと嫌われるキャラ……」
「どっかの誰かさんみたいね」
「…………こんなキャラのどこが良いんだ香澄は…………」
「……………………1年前までのあんたのことを知ってる人間が今の発言聞いたら、全力で引くわよ」
「こんな、自己中で、人を人とも思わないようなキャラに、僕は香澄を奪われたというのか……?」
「ツッコミどころしかない発言だけど、ついでにタマとにゃんこ姫も調べてみたら?」
その言葉を聞いてすぐ、涼は親指をものすごいスピードで操作した。
「タマは…………丸っこい…………よくわかんない点々がついてる…………」
「その点々、目と口だから。あと一応、猫ね、それ」
「にゃんこ姫は…………2本足で立って着物を着ているよくわかんない生物……」
「だから、名前からしてもそれ、猫ね。香澄は猫好きだから」
「そうなのか!?ラッコだけじゃないのか!?」
「え、ええ……犬も嫌いじゃないけど、猫派だって言ってたけど…………ってちょっと、そんな端の方で屍のように転がらないで!」
涼は、いかに自分が香澄の好みを知らなかったのかを改めて知った。
そのせいで、せっかく腕に抱きしめられるようになった香澄が、自分から去っていくのではないかと急に怖くなった。
その危機感から、涼は久しぶりに全力で自分の脳みその細胞をフル稼働させた。
今の情報をミックスした結果、涼は香澄に注目し続けてもらえる可能性を1つだけ見つけた。
「僕……じゃなかった……俺……今日から俺様キャラの猫になる…………」
「あんたに大学主席卒業譲った、他の天才が今の発言聞いたら泣くからやめて!!!ほんっとやめて!!!」
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