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香澄にとって、二次元は荒んだ心を整えてくれる癒し。
グッズは、できるなら山ほど欲しいし埋もれたいと日々思っている。
推しに囲まれる生活は、衣食住で精一杯だった時代から強く憧れてもいたから。
だから、ぬいぐるみやアクスタを集めて、ニヤニヤと眺められる今は幸せだと思ってる。
限定品とか、今しか手に入らない系のものは、出会っただけで
「生まれてくれてありがとう!」
と、本気で香澄は思っている。
(でも、それと涼先生とのことは……やっぱり違うんだよね……)
体温を感じられる幸せも、その人の匂いを嗅いでるだけで落ち着く心も。
それは全部三次元ならでは。
香澄は知ってしまったのだ。三次元で男に愛される心地よさを。
もし、それらを完全に手放せるかどうか聞かれたら、今の香澄には自信がない。
だからこそ、香澄は三次元での初めての恋愛に向き合い続けることは、少ししんどいとも思い始めていた。
涼のことは好き。
でも、二次元の恋愛攻略はとっても簡単なのに、三次元は難しくてほんの少し苦しい。
「一体いつになれば、三次元でちゃんと恋愛できるようになるんだろう……」
そんな自信が少しでも欲しくて、まずは女磨きをできるだけのお金が欲しい、と思った結果の今。
でもその自分の選択が、どこかチグハグなんじゃないかと思い始めてもいた。
「怖いな……」
このあと、涼と向き合うのが。
いっそ、眠ってしまおうか。
そう思ったまさにその時、スマホにメッセージが届いた。
「先輩……?」
そこに書かれていたのは……。
「このまま風呂の準備だけして、起きて待ってなさい……?」
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