第1章 SSRって、何?

22/81

1928人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
 香澄は、急いでバスタオルで体を隠した。  涼に全身を見られる事は、寝室の暗い部屋では時々あるものの、浴室は明るい。  ただでさえ、涼からの見られ方を気にした結果、手入れグッズを買うために仕事の量を増やしたのだから、今この状況で涼に見られるのは、香澄にとってはなかなかの地獄だった。 「ご、ごめんなさい……!!」  香澄は、タオルで体を隠したまま浴室へと早歩きした。  少し前までは、油断するとつい走ってしまいそうになっていたが、もうそんなことをしてはいけないと分かるくらいには、香澄に母親の自覚は芽生え始めていた。  浴室の扉を閉めた香澄は、暴れ回る心臓を抑えるために、数回深呼吸をした。そのせいで、変に詰まって香澄は咳き込んでしまった。 「香澄!?」  扉越しから涼が心配する声が聞こえる。  ますます、いたたまれないと思った香澄は、涙が出るのをこらえながら 「大丈夫ですから!」  とかすれ声で叫んだ。 (どうか、私のことは放っておいて欲しい)  そんな思いを言葉に込めたつもりだった。  が、少し経って涼から返ってきたのは 「僕も一緒に入るよ、お風呂」  だった。
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1928人が本棚に入れています
本棚に追加