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「香澄」
「…………はい…………」
「どうして壁の方を見てるの?」
「私なんかが涼先生の裸を見るのは、神に許されない気がしまして、はい」
イケメンを濡らすシチュエーションは、二次元でも大人気だ。
お風呂上がりや雨のシーンなどで、髪や顔が濡れている表現は、ただのイケメンをさらなるイケメンへと進化させる効果があると、香澄は思っている。
そしてそのルールは三次元でも適用されているらしく、勉強のために見る映画でも、イケメンのシャワーシーンや雨に濡れるシーンはよく見かける。
だから、香澄も積極的に「濡れる」シーンは自分の作品でも使うようにしていたのだが……。
(実際のイケメンが濡れるシチュエーションはヤバすぎる……神々しい……無理……油断したら鼻血が出そう……)
香澄の位置からは、涼の整った横顔と分厚い胸板はしっかりと観察できる。
シャワーの水が涼の髪とまつ毛を濡らし、滴る様子は
(こ、これは国宝か!?)
と言いたくなるくらい、完璧な画になっていた。
もし自分がシナリオライターではなく映画監督だったら、間違いなくカメラを回していただろう。
そんな素晴らしい涼の全裸を、いくら自分の父が建てた大事な家とはいえ。
ごく普通の風呂場で、香澄1人が眺めることにものすごい罪悪感があったのだ。
ただ、香澄が涼の濡れた顔を見られないのはもう1つ別の理由もあった。
濡れた髪に頬、そして熱を帯びた視線は、涼のベッドでの汗に濡れた姿を想起させてしまうのだ。
そこまで考えた香澄の体は、のぼせそうなほど熱くなってしまった。
「す、すみません涼先生、俯いてもらっていいですか?」
「どうして」
「先にあがっちゃいますので」
このままここにいれば危険だ。
咄嗟に香澄はそう考え、逃げ出そうとしたのだが
「離さないよ」
と涼は香澄の背中を抱き寄せた。
そして、耳元に唇を近づけて、こう囁いた。
「言っただろ?シテあげたいことがあるって」
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