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生まれたて状態でリビングのソファまで、香澄は涼に連れて行かれた。
(あの時のハムスターも、こんな気持ちで隠れたくなったのかな……)
人間パニックになった時、急に突拍子もない記憶を思い出すもので。
何故かこの時の香澄の脳内には、小学校の時、クラスで飼っていたハムスターを逃したエピソードが再生されていた。
あの時は確か、香澄がハムスターのもふもふ感を堪能したくて、ひょいとハムスターの体を掴んだのだ。
ケージからハムスターを出した瞬間、私の手を引っ掻いたハムスターは、咄嗟にどこかに逃げてしまった。
あの日は、クラスメイト達からものすごく怒られながら、どうにかすみっこの陰で丸まっているハムスターを捕まえることはできたのだけど……。
今の私は、まるであの時のハムスター。
すっぽんぽんで光の中に晒されて、恥ずかしくなって逃げたくなった。
そんな風に解釈したくなるくらい、自分の今の状態と被った。
「あの、涼先生、私…………」
服を着たいです、と香澄が言おうとした時だった。
涼が「はい」とバスローブを渡してきた。
「これ……は?」
「ん?これから香澄にシてあげたいことのために必要なものだよ」
涼はパリコレモデルも跪きたくなるような、綺麗な微笑みを浮かべながら、言った。
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