1928人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
「どうしたの?」
涼はもう1度ボトルからクリームを出し、もう1度手のひらで温めてから、香澄の足に触れた。
ただし、今度は全く別の場所。
「ふ、ふくらはぎ……」
「ここも、ずいぶんむくんでるみたいだね」
そう言いながら、涼は足首から香澄の膝裏にかけて、指圧していく。
「どう?痛くない?」
「あ、痛くは……ないです……」
「じゃあ、気持ちいい?」
「それは……」
香澄は、さっき触れられた場所が場所だっただけに、昼間には口にできない……文章には書けるけれど……な、ちょっぴりいやらしい展開を想像してしまった。
でも、涼がしてくれているのは、本当に香澄の体をリラックスさせるためのマッサージだ。
涼がいい感じに圧をかけてくれるおかげで、香澄のこわばった体が少しずつ柔らかくなっていく。
涼の完全なる白い善意を、自分のいやらしい妄想で汚してしまったのが、香澄は申し訳なかった。
「き、気持ちいいですよ」
私は、赤ちゃんの胎教には明らかに悪い考えを打ち消しながら答えた。
すると涼は、こうささやいてきた。
「嘘」
「え」
「分かってるよ。君が今、何を考えたかは」
「ど、どういう……」
香澄が口を開いた瞬間、ふくらはぎにあったはずの涼の手が、再び足のつけねに触れた。
「ひゃっ!」
「分かってるんだよ、香澄。だって、僕がそうなるように作ったんだからね」
「つ、作る……?」
「そ。でもね、僕は別に君にただリラックスしてもらいたいだけなんだ。だから……我慢、がんばろうね」
そういうと、涼は今度は太もものマッサージを始めた。
(がんばるって、何を?)
最初のコメントを投稿しよう!