第1章 SSRって、何?

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 涼の言葉の意味を、香澄はすぐに身体で実感することになった。 「涼先生……どうして……さっきからそんなところばかり触れるんですか?」  涼はそれからずっと、香澄の太ももばかりマッサージしていた。 「脚のむくみの原因は、太ももにあるんだって」 「そうなんですか?」 「うん。特に大腿四頭筋っていう大きな筋肉がここにあるんだけど」  ここ、と言いながら涼は指で前太もも部分をなぞっていく。  そのなぞり方は、香澄を焦ったくさせる。 「ここが硬いと、腰痛にも繋がっちゃうんだって」 「腰痛……」  香澄にとって、腰痛は職業病のようなもの。  ごまかしごまかしきたけれど、妊娠してからその痛みは加速した。  そろそろ本気で病院に行かなくては、と思っていたところだった。 「僕も、香澄が腰痛ひどいと困っちゃうから」  涼はそう言いながら、今度は香澄の腰部分を撫でてきた。  腰越しにつたわる涼の手のひらの感覚が、またもや夜のベッドでの出来事を呼び起こしそうになる。 「あれ、どうしたの香澄。そんなに顔を真っ赤にさせて」 「さ、さっきからずるいです……」 「どうして?僕は、太ももと腰をマッサージしているだけなのに」 「ううっ……」  涼は、くすっと微笑みながら香澄の耳たぶをぱくりと食べながら、こうささやいた。 「もしかして……僕が欲しくなっちゃった?」 「なっ!?」 「ふふ」  涼が微笑む度に吐息が香澄の中に入り込み、香澄の下半身を刺激する。 「だめだよ。赤ちゃんが驚いちゃう。僕たちの交わりは、ちょっと刺激が強いからね」 「だっ……だだだだ」  だったらそんなことしないでください!  そう、香澄が言おうとした時だった。  やってきたのだ。アレが。 「あ、やらねば……」 「!?」  あの、SSRのアラームが。
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