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しかも、そのアラームはこのリビングから発せられているのではない。
おそらく、2階の香澄の部屋だろう。
もし2人でもう少し大きな声で話していたら、聞こえなかったであろう小さな音。
でも、香澄はそれに気づいてしまった。
「すみません、涼先生、私ちょっと用事が」
「行かせないよ」
「え?」
涼は香澄をそのままソファに押し倒し、そのまま自分も香澄の横に寝そべった。
ギリギリ2人分の体が寝られる程の幅が、ソファにはあったのだ。
「りょ、涼先生!?ちょっと……どうしたんですか!?」
香澄は、ぎゅうっと抱きついてくる涼の腕から逃れようとみじろぎした。
けれど、涼の腕はびくともしない。
それは、涼も行かせまいと必死だったから。
「涼先生?本当にどうしたんですか……?」
香澄は、涼の様子がおかしいことに気づいた。
けれど、まだこのタイミングではその理由に気づけるほど、涼の嫉妬心を知り尽くしてはいなかった。
「立花潤、カミーユ、桜井健一、真田邦彦……」
「そ、その名前……」
いきなり、自分が今ちょうど仕事で向き合わなくてはいけないキャラクターの名前が涼から飛び出てきたことに、香澄は心底驚いた。
「どうして、涼先生がその名前を……」
「ねえ、香澄……」
涼は、怪しく目を光らせながら、自分の親指で香澄の唇に触れながらこう囁いた。
「僕とそいつら、どっちが好きなの?」
「…………へ?」
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