第1章 SSRって、何?

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 香澄は、自分の耳を真剣に疑った。  三次元では完璧超人イケメンの涼が、二次元のキャラクターと自分のどちらが好きと聞いてくるなんて、想像したこともなかったから。 「あの……涼先生?私の空耳でしょうか?」 「何が?」  涼の声が、少しだけイラついているのが香澄にも分かった。 「あのですね……こんなこと聞くのもおこがましい気もしているんですけど……」  自分を射抜いてくる涼の鋭い視線に耐えきれなくなり、香澄は顔を逸らしながら尋ねた。 「今……ゲームのキャラクターと自分、どちらが好きかと……おっしゃいました?」 「言ったよ」  涼は、両手で香澄の顔の位置を戻し、香澄が自分の顔を見られるようにしっかり固定した。  香澄は、目をキョロキョロさせるくらいしか対抗策がなかったが、それだと涼が視界から完全に消えることはない。  あまりにも真剣な涼の表情に、香澄は顔が熱くなるのを抑えきれなかった。  涼も、それを手のひら越しに感じていた。 「顔、熱くなってるね」 「そ、それは涼先生が……」 「僕が……何?」 「…………その…………じっと私を見てくるから」 「見るよ。ずっと見ていたいよ。何だったら君の目も、僕しか見えないようにしたいよ」  そう言いながら、涼は香澄の唇をさっと奪う。  それからしばらく、香澄の唇の味を堪能してから、涼はほんの少し唇を離してからまた言葉を発する。 「でも、僕はいつも、僕との時間を君のスマホの中にいる男たちに邪魔される。それが、許せないんだ」 「で、でも彼らは二次元のキャラクターですし」 「そんな風に、君はいつもそいつらを人間のように扱うじゃないか」 「そ、それは……」 (二次元とはいえ、人の形をしているのに、それとかあれとか、物のように扱うのはさすがに躊躇われるんだよな……)  神絵師の美麗絵と神声優のイケボが組み合わさったキャラクターは、やはり香澄の中では液晶の中にいるとはいえ、人間として扱いたかった。 「また、そいつらのこと考えてるでしょう」 「え!?」 「どうして分かったの、とでもいうのかな。答えは簡単だよ。君が、僕を見ているようで見ていない視線の時は、いつも彼らが君の頭を支配してるんだ」  そう言うと、涼はもう1度香澄にキスをしてから、とんでもないことを尋ねてきた。 「どうしたら、君の頭の中から彼らを追い出せる?」
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