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香澄はこの時、自分が携わっていた乙女ゲームのことを思い出していた。
あの時は、必ず選択肢が2つか3つは用意されていた。
大当たりの選択肢を選べば好感度爆上げできるけど、大外れの選択肢を選べば即ゲームオーバー。
その選択肢を選ぶことだけでも、香澄は怖いのだ。
それなのに、今は選択肢すらない。
試験で言えば、記述式状態だが、部分点がつくところか回答次第ではマイナスにすらなる可能性がある。
(どうしよう……どうしよう……)
香澄は、パニックになっていった。
(わからない、誰か教えて……!)
何故、涼の前に選択肢が現れてくれないんだろうと、香澄はここが二次元じゃないことをほんの少し恨んだ。
それくらい、今香澄は、自分の言葉を失敗したくないと思っていた。
ところが、声が出ない代わりに、出てきてしまったものがあった。
「か、香澄……!?どうして泣いてるの!?」
「え……?」
いつの間にか、香澄の目からは大粒の涙が溢れていた。
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