第1章 SSRって、何?

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 パッとスマホから顔を上げた香澄は、しっかりと涼を見ながら 「お帰りなさい、涼先生」  と言った。  たったそれだけのことが、涼には踊り出したくなるくらい嬉しい。 「今日の体調は?」  涼は、荷物を置き、そのまま香澄の横に腰掛け、香澄の少しふっくらしたお腹を撫でる。 「大丈夫です。ありがとうございます」  香澄は現在妊娠5ヶ月に入っており、先日戌の日の帯祝いをしたばかりだった。 「安定期に入ったからって、油断しないでね。君がつわりで苦しんでいる時、何度君が死ぬんじゃないかと怯えてたんだから……」 「その節は、心配かけてすみませんでした」 「香澄、そうじゃないでしょ?」 「え?」 「僕が1番欲しいものは、君からの謝罪の言葉じゃないって、いつも言ってるでしょ?」  そう言うと、涼は自分の頬を指差した。 「謝るくらいなら、いつものやつ……頂戴」  この仕草といつものやつという言葉は、香澄との間でしか通じない、暗号のようになっていた。 「……わ、分かりました」  香澄は照れながらチュッと、涼の頬に触れるだけのキスを落とす。   「これで……良いですよね」 「ダメ、まだ足りない」  涼はそのまま、香澄の頬を捉える。 「もう僕は、君に飢えているんだ」  それからすぐ、涼は口を開けて香澄の唇ごと奪うような激しいキスを始めた。
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