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「あれ?私……」
(どうしよう、涼先生が困ってる……泣き止まなきゃ……)
焦れば焦るほど、香澄の目からはどんどん涙が出てくる。
香澄はこの涙を止める方法が分からなかった。
「ごめんなさい、私!」
香澄は、涙がおさまるまで涼の側から離れなくてはと思った。
けれど立ち上がる前に、涼の腕にすっぽりと収められてしまった。
「香澄、ごめん……泣かせるつもりじゃなかったんだよ」
「違います、私が勝手に……」
「でもそれって、僕が君に選択を迫ったからだよね? あいつらと僕、どっちが好きって」
「そ、それは……」
(確かに、そうなのだけれど……)
「まさか、君が泣くほど悩むなんて思わなかったんだ……ごめん……」
「涼先生……」
「僕が、彼らよりもっと魅力的になれば、君を泣かせなくて済むのかな」
「え?」
香澄は、涼の回答の方向性が何か違うことを察した。
「待ってて、香澄」
「な、何をですか?」
「明日には僕、彼らのようになるから。そしたら今の僕よりずっと、好きになってくれるからもう迷わないよね」
「え、ちょ!」
「そうと決まれば早速……」
涼は香澄を片腕で抱きしめたまま、もう片方の手でスマホを操作し始めた。
「りょ、涼先生?何をして……」
香澄が覗き込むと、ア●ゾンの画面を涼は真剣に眺めていることが分かった。
そして検索していたのが「立花潤のウイッグ」だった。
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