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香澄が本当に言いたかったのは、涼が香澄に「二次元と俺、どっちが好きなの?」と聞いた時に、返事の仕方がわからない、ということ。
つまり、涼は香澄にそれを聞く度に、香澄を困らせていた、ということ。
冷静に考えれば簡単に導き出せることを、涼はすっかりと抜けてしまっていたのだ。
「ごめん……香澄……」
涼は謝った。自分が香澄を怖がらせていた事実に。
「涼先生……どうして謝るんですか?」
香澄は、逆に申し訳なく思った。
そんな切ない顔をさせたくて、尋ねたわけではなかったから。
ただ、香澄は涼への返事をミスして嫌われたくなかっただけ。
涼は、香澄の愛を独り占めしたかっただけ。
まだこの時点で2人の気持ちは、ちゃんと互いに伝わってはいない。
涼は、もう1度香澄の髪に触れ、軽くキスをする。
香澄を安心させるように。
それから、じっくり、ゆっくりと香澄の頬に触れてから、2つ目の選択肢をこう伝えた。
「僕が1番だって、言って欲しい」
それは、すべてのジャンルで軽々と1位を取り続けた涼が、初めて真剣に望んだ、本当の1番だった。
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