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「たっくんのくせに、香澄をいじめるなんて生意気だよ」
そこで助け(?)に入ったのは、自称香澄の運命の相手。そう。あくまで自称だと、拓人は無理やり認識していた。
「これのどこがいじめてんのよ!ていうか、元々はあんたが、ゾンビのように私の家に来るから、こんなことになってんでしょうが!」
「えっ、どういうことですか?」
香澄にとって、涼が拓人に家にいつの間に行っていたことが驚きだった。
拓人は、涼に見せつけるようなため息をついた。
「あんたが仕事を受けてるそのゲームのキャラに嫉妬しまくったこいつが、愚痴りにきたのよ」
「ぐ、愚痴ですか!?」
涼には決して似合わない言葉は、香澄をまたもや驚かせた。
「人聞きの悪いこと言わないでくれるかな」
「何よ、香澄が〜こいつらばかり気にするなんて許せない〜って泣きついてきたのはどこのどいつよ!」
「それはたっくんの勘違いじゃないかな」
「はあ!?何よ何よ!せっかく……あんたのためなんかじゃないけど……調べてきてあげたってのにその言い草は!」
「それだけは評価してあげるよ。ということで香澄」
涼は、香澄の手をとり、そっと握った。
それは、真実を話すまで、この場から香澄を逃さないという涼の決意の表れでもあった。
「教えてくれるかな?僕は弁護士だからちゃんと真実を知りたいんだ」
「……それ……は…………」
涼は、さらにぎゅっと手に力を込める。
「ね、お願い」
涼の、低く響く優しい声に、香澄の心のバリアが勝手に解かれてしまった。
でも。
「私、出産後に涼先生に嫌われたくないんです」
香澄の最初の告白文は、涼だけでなく拓人にとっても、全くの想定外だった。
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