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拓人は、女性向けの商品でヒットを出し続けることができた人。
そんな人が、無意識に大声で叫んでしまったというのは、彼がデリカシーがないなんてことは、ない。
デリカシーのことなど頭からすっ飛んでしまうくらいの内容だった。ただ、それだけ。
「ご、ごめんなさい、香澄。でも……でもね……」
拓人は、自分が普段なら絶対しない失態に自分自身で戸惑いつつ、その理由を端的に説明した。
「いい香澄」
「はい」
「あれを、見なさい」
「あれ?」
拓人はちらと目配せして、香澄に涼を見るように仕向けた。
自分の、内に秘めた欲望を、1番知られたら恥ずかしい人に知られてしまったことから、香澄はなかなかそちらの方に顔を向けることができなかったが
「……残念ながら大丈夫よ」
残念ながらの部分を強調しながら、さらに拓人はこう言葉を続けた。
「私にとってはものすごく気持ち悪いけど、香澄にとっては……うーん……嫌だけど、嫌だけど、悪い展開にはならない……くうっ」
どういうことだろうと、香澄は勇気を振り絞って涼を見た。
そこには、手を口に当てて、ニヤついた笑みを隠そうとしつつも、そわそわと何かよからぬことを考えてそうな涼の姿があった。
ちなみにその右手は、超高速スピードでスマホを操作していた。
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